今回は、家事従事者の休業損害に関する記事です。
交通事故にあって、仕事を休まざるを得なくなった場合、それでお給料を減らされることがあります。
本来であったら(事故さえなければ)もらえたはずの賃金を、交通事故にあったためにもらえなくなる、これを休業損害といいます。
交通事故の示談の際には、この休業損害も請求できます。
これが、サラリーマンであれば、話は比較的簡単です。
現実の収入をもとに、休業損害はいくらか、ということが計算できるからです。
これに対して、専業主婦のような家事従事者の場合、現実の収入はありません。
しかしながら、交通事故の被害にあって、ケガをした場合、現実には主婦業を休まなくてはいけなくなることが多いでしょう。
その場合、主婦は現実に収入を得ていないからといって、休業損害をもらえないのでしょうか?
そんなことはありません。
主婦も家事という立派な労働をしているのであり、その労働の金銭的評価が困難なだけに過ぎません。
主婦が休業損害をもらえるかについては、争いがありましたが、最高裁判例(昭和50年7月8日・交民8巻4号905ページ)でも認められています。
Point主婦でも休業損害は請求できる
では、主婦も休業損害を請求できるとして、いくら請求できるのでしょうか。
これは、「赤い本」(平成25年版・70ページ)によれば、賃金センサス第1巻第1表の産業計,企業規模計,学歴計,女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎として,受傷のため家事労働に従事できなかった期間につき認められるとされています。
Point主婦の休業損害は賃金センサスを基礎に算出される
では、具体的に『賃金センサスの~』がいくからというと、平成23年は、355万9000円でした。
これを単純計算すると(365で割ると)、主婦の休業損害の金額は1日当たり9751円(小数点以下切上げ)となります。
これをもとに、ケガの程度などに応じて算出していくことになります。
ただ、慰謝料の項目でも説明したように、原則として、休業損害は症状固定までの期間しか請求できないのが一般的でしょう(症状固定以後は、逸失利益の問題になります)。
次に、兼業主婦も解説していきます。
兼業主婦は、現実の収入を得ると共に、主婦としても稼動しています。
それでは、現実の収入をベースにした休業損害と主婦としての休業損害、この両方を獲得できるかというと、さすがにそれは難しいと思われます。
これも、「赤い本」(平成25年版・70ページ)によれば、パートタイマー、内職等の
Point兼業主婦については、現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎として算出する
とされています。
収入の額によるところですが、私の経験上、女性労働者の平均賃金額を基礎に算出したほうが高額になるケースが多いです。
兼業主婦の方も、注意しておきたい項目の一つですね。
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