勝つか負けるか分からない事件が多数
事件には「勝ち筋」「負け筋」があるとはいえ、受任段階で、どちらが勝って、どちらが負けるか、見通しがはっきりとしている事件はそれほど多くありません。
むしろ、訴訟になる案件というのは、どちらが勝つかが分からない事件が多いです。
どちらが勝つかが分からない以上は、弁護士の能力次第で、『勝ち』を引き寄せることもできるでしょう。
負けるべき事件でも負け方というものがある
また、負けるべきで事件でも、負け方というものがあります。
訴訟というのは、敗訴か勝訴かの2択ではありません。
様々な解決方法があります。
たとえ、負けるべき事件でも、負けを必要最小限に抑えることが肝要です。
簡単に言えば、訴訟の最後までを見通したときに、100万円を支払え、という判決がでそうであれば、和解で50万円にまけてもらう、といったようなことです。
もちろん、こういった和解案を相手にのませる必要がありますが、最初から白旗をあげて「50万円で勘弁してください」なんて言っても相手は聞く耳をもちません。
そのため、全力で抵抗します。
全力で抵抗し、相手に、「これはひょっとすると自分の主張が全面的には通らないのではないか」という危機感を抱かせることによって、こちらに有利な和解条件を引き出すことが可能になります(もちろんケースバイケースですが)。
勝っても負けるということはあるものだ
日本の法律では、お金がない人からお金をとることはできません。
たとえ、『100万円を支払え』という判決をもらったとしても、相手が支払えるだけのお金を持っていなければ、回収はできません。強制労働上に連れて行って、「カネがないぶんは体で払え」なんてことは不可能です(ただし、これは民事の話です。刑事事件で罰金を科せられたのに払わなければ、いずれ労役場に連れて行かれます)。
また、破産されてしまえばおしまいです。
そのため、お金がない人からもきちんと回収するテクニックが必要です。
相手の言い分を一切きかず、強気で判決だけをもらっても、相手に「どうぞ、判決に基づいて強制執行してくださいな。お金なんてないので払えませんけど」という焦土戦術をとられては、判決文なんて画餅に帰します。
そのため、相手の資力によっては、完膚なきまでにたたきつぶすのは危険です。
「勝ち筋」の事件でも、完勝まではせず、相手に逃げ道を残しておいてあげて、最後にその逃げ道に逃げ込ませる、といったテクニックも必要となることがあります。
結論
このように、「どんな事件でも絶対に勝訴する弁護士」というのは存在しません。むしろ、依頼者に有利な結果となることを請け負ったり、保証するような弁護士は、弁護士職務基本規定に違反しているおそれがありますので、注意が必要です。
そんな弁護士を探すべきではないですし、せいぜい「今まで敗訴判決はもらったことがない」、経験の浅い弁護士くらいしか見つからないでしょう。
何をもって優秀な弁護士とするかについて、客観的な基準はありません。
ただ、事件に応じて柔軟に対応し、『依頼者利益の最大化』をはかれる弁護士こそが優秀な弁護士ではないかと私は考えます。
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