今回は、慰謝料の金額について記述していきます。
Point慰謝料は、保険会社が提示してくる初回の示談金額から、増額可能性が高い項目の一つです。
たとえば、北河隆之『交通事故損害賠償法』(平成23年4月15日・弘文堂)205ページには、「保険会社の提示する慰謝料の額は,通常,「赤い本」や「青い本」の基準をかなり下回るのが実情である.最初は,自賠責保険の支払基準で提示してくる例もある」とあります。
私の経験上も、慰謝料は、かなり低い金額で提示されることが多いです。
その分、弁護士が交渉することにより、増額する可能性が高い項目といえます。
では、慰謝料はどうやって決めるのでしょうか。
弁護士費用特約の項目でもふれたように、弁護士は一般的に、裁判基準で交渉していきます。
この裁判基準を分析した書籍が、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準』(通称「赤い本」)や公益財団法人 日弁連交通事故相談センター『交通事故損害額算定基準』(通称「青本」)です。
弁護士が裁判基準を算定する際に、この赤い本や青本を利用することが一般的でしょう。
※ただし、大阪では、大阪弁護士会交通事故委員会『交通事故損害額算定基準』(通称「緑の本」)を用いるのが一般的と思われます。
では、具体的に慰謝料の裁判基準がいくらになるかをみていきましょう。
ですがその前に、慰謝料には大きく分けて3種類あることを覚えておきましょう。
(1)入通院慰謝料(ケガで入院や通院した場合に払われる慰謝料)
(2)後遺障害慰謝料(事故の影響で後遺症が残ってしまった場合に支払われる慰謝料)
(3)死亡慰謝料(事故で死亡した場合に支払われる慰謝料)
これらの慰謝料は、いずれか1種類しか獲得できないというわけではありません。
たとえば、交通事故にあったので、がんばって入院・通院したが、残念ながら後遺症が残ってしまった場合には、通常、(1)入通院慰謝料と(2)後遺障害慰謝料の2種類が請求可能になるでしょう。
この順に解説していきます。
(1)入通院慰謝料
入院の日数や通院の日数に応じて算定される慰謝料です。
たとえば、赤い本(平成25年版150ページより引用)では、他覚症状のないむち打ち損傷の場合には、
入院なし
通院3か月で53万円
通院6か月だと89万円
とされています。
入通院慰謝料は、病院に通った期間や実際に通った日数に応じて算定されますが、ここで注意が必要なのは、病院に通えば通うほど、上限なしに慰謝料が増額されていくわけではないということです。
入通院慰謝料は、病院に通った期間に応じて算定されますが、これは、通常『症状固定』(通常は、医師が判断します。また、保険会社も症状固定以後は治療費を打ち切ってくるので、治療費を打ち切られた期間までとなるケースも多いでしょう)までの期間で算定されるためです。症状固定後も、病院に通い続けても、原則として、慰謝料算定の日数には含まれないでしょう。
(2)後遺障害慰謝料
後遺症の程度に応じて支払われる慰謝料です。
交通事故における後遺障害の等級には、1級から14級まであります(1級が一番重く、慰謝料も高い)。
これも、赤い本(平成25年版152ページ)より引用すると、
1級:2880万円
2級:2370万円
3級:1990万円
4級:1670万円
5級:1400万円
6級:1180万円
7級:1000万円
8級:830万円
9級:690万円
10級:550万円
11級:420万円
12級:290万円
13級:180万円
14級:110万円
とされています。
後遺症があるものの、このような等級に認定されなかった場合の慰謝料をどうするか、という問題がありますが、それは、またいつか説明していこうと思います。
今回は基本の説明なので、これでとどめます。
(3)死亡慰謝料
死亡慰謝料は、文字通り、交通事故によって被害者の方が死亡してしまった場合の慰謝料です。
これも、赤い本(平成25年版141ページ)より引用していきます。
死亡慰謝料は、なくなった人がどういった人かによって変動する傾向にあります。
一家の支柱 :2800万円
母親,配偶者:2400万円
その他 :2000万円~2200万円
慰謝料の基本はこのような内容になります。
ただ、ここで注意していただきたいのは、ここでご紹介したのはあくまで目安に過ぎないということです。
慰謝料も事情に応じて増減しますのでご注意ください。
困ったら、まずは、弁護士などの専門家にご相談されると良いでしょう。
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