治療費は原則として症状固定の時期まで認められます(症状固定とは、医師が治療をしていって、これ以上治療による改善が見込めなくなった時期をいいます)。
また、入通院慰謝料は交通事故でケガをしてから、症状固定する時までの期間に応じて支払われます。
このように、症状固定時期がいつとなるかは、非常に重要な問題です。
ですが、交通事故でよくある「頚椎捻挫(頸椎捻挫)、頚椎挫傷、むち打ち、外傷性頚部症候群(外傷性頭部症候群)」などと診断される分野(長いので、ここでは、「むち打ち等」とまとめます)において、症状固定時期がいつとなるかは非常に難しい問題を含んでいます。
なにせ、むち打ち等のメカニズムは医学的にも完全に解明されているとはいえない分野です。いつまで治療をすれば良いか、いつになったら症状が一進一退の状態になるのかは、お医者さんでも判断がわかれるところです。
長い人では、2年近く通院している方もいます。
それでは、被害者が希望する限り、いつまでも加害者が治療費を負担する義務があるかというと、そういうことはありません。
通院が長引けば、加害者(通常は加害者が加入している保険会社)も、もうこれ以上は治療費は支払えません、と言って争ってくることがあるでしょう。
では、症状固定時期はいつとするのが妥当なのでしょうか?
通院期間は6ヶ月が目安
むち打ち等の治療期間は、一般的に3か月~6か月程度とされています。
保険会社もだいたいこのくらいの時期に治療費打切りの打診をしてくるでしょう。
長く通院しすぎると、短縮認定されることも
じゃあ、実際、6ヶ月を超えて通院している場合はどうなってしまうのでしょうか?
加害者が、「通院期間が長すぎる」と主張すれば、裁判所が短縮して認定することがあります。
たとえば、受傷してから6か月までは加害者が負担、でも、6か月以降の分は被害者が全額負担しなさい、ということがあり得ます。
症状固定の判断要素
・医師が症状固定と診断した場合
→治療の専門家である医師が、これ以上治療しても治療によっては改善しないと判断している以上、裁判所もこれを尊重します。非常に重要な要素です。
・治療の中断
→中断された理由やそれまでの通院状況にもよりますが、通院しなくなったのは、通う必要がなくなったからと判断される可能性があります。
・一進一退の状況が2ヶ月以上継続した場合
交渉段階で短縮の主張をされることは少ない
このように、通院のし過ぎには危険がありますが、いったん支払った治療費を、保険会社が後々になって、やっぱり払いませんと言ってくることはあまり多くはありません(と言っても程度問題ですが)。
通常は、黙って支払うのではなく、保険会社のほうから、だいたい3か月から6か月が経過した時点で、そろそろ症状固定にしましょうか、と言ってくるのが通常です。
後遺障害の認定に影響する可能性があるのでご注意を
症状固定となっても痛みやしびれが残っている場合には、後遺症として認定される可能性があります(12級もしくは14級)。
しかしながら、痛みというのは外見からは判断できません。
様々な要素から判断されますが、私の経験上、どうも通院期間や通院日数も影響しているように思われます(ひどい痛みが残っているのなら、これくらいは通院するはず、通院日数が少ないのは、そんなに痛くないから、と思われるからでしょう)。
通院期間が6か月より短いとかなり認定率が落ちているように思われます。
後遺症認定を視野に入れる上でも、通院期間にはご注意を。
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