破産をする際に見逃しがちな財産の解説。
今回は、退職金について解説していきます。
未支給の退職金も財産として扱われます
退職金を受け取ってしまったら、退職金が財産である、ということは理解しやすいでしょう。
退職金は、通常、仕事を辞めないともらえません。
でも、退職金は、定年を迎えた日に突然ふって湧いてくるようなものではありません。
じょじょに金額が積み重なっていくようなものです。
そのため、たとえば定年を迎える前に自主退職をすれば退職金は支給されるでしょう。
つまりは、退職金そのものではなく、退職金請求権(退職金を受け取る権利)というものがあり、これは財産になるのです。
そのため、破産をするととられる対象になってしまいます。
とはいえ、退職を強要されるわけではありません
退職金請求権が財産であることは否定できません。
しかし、退職金は退職するまで支給されません。
そうすると、破産をすることによって会社を辞めて、退職金を破産管財人に支払わなければいけないかというと、そんなことはありません。
退職金が、破産によってとられてしまうとしても、会社を辞める必要はありません。
では、退職金はどういう扱いになるのか
会社を辞める必要はありませんが、かといって、退職金請求権という権利をまるまる見逃してくれるほど裁判所は甘くありません。
破産者の手元に残してもらえた財産(これを自由財産といいます)や破産手続開始決定後に得る給料などの財産(これを新得財産といいます)から、退職金相当額を支払うよう要求されるのが通常です。
退職金相当額は全額支払う必要はない
退職金は民事執行法152条2項で、3/4の差押えが禁止されています。
破産法(34条3項2号)では、差押えが禁止されている財産はとられない、と規定しています。
つまりは、退職金相当額を積み立てるとしても1/4までで良いのです。
しかも、多くの裁判所では、退職金が将来支給されるものである、ということも考慮して、退職金は1/8相当額を積み立てれば良いとしています(野村剛司・石川貴康・新宅正人『破産管財実践マニュアル〔第2版〕』2013年7月3日・青林書院・148頁参照)。
ちなみに、退職が間近に迫っているような場合には、4分の1で評価されることが多いです。
まとめ
これをまとめると以下のようになります。
原則
退職金相当額の1/8を積み立てれば良い
退職が間近
退職金相当額の1/4を積み立てれば良い
破産手続開始決定前に退職金を受領
退職金全額をとられる(すでに現金もしくは預金になっているため)
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