破産をしても残しておける財産の解説。
第2回の今回は、自由財産拡張というものについて解説していきます。
本来的自由財産だけだと不公平になることが
前回、本来的自由財産について解説しました。
破産法34条3項は、99万円以下の現金と差押禁止財産を保護してくれます。
しかしながら、現代日本において、現金を99万円も持っている人はそんなに多くないのではないでしょうか。
多額の現金を持っているのは危険ですので、たいていの方は、預金や貯金という形で保管しているでしょう。
しかしながら、法律上、『現金』と『預貯金』は違います。
破産法34条3項しかなかったら、たまたま『現金』で99万円持ってた人は、破産をしても全額手元に残しておけるのに対し、『預貯金』という形で99万円を持っていても、全部とられてしまうことになります。
このように、現金や差押禁止財産だけを保護するというのは、ちょっと今の感覚にそぐわない結論になってしまいます。
条文
そこで、破産法34条4項は、以下のように規定しています。
「裁判所は……決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。」
簡単に説明すると、裁判所は、破産法34条3項で保護される
・現金
・差押禁止財産
以外の財産でも、色々な事情を考慮した上で、破産者の手元に残す、という決定をすることができるのです。
どんな財産を残せるの?
Qそれでは、どのような財産をいくらまで残してもらえるのでしょうか?
Aケースバイケースです。
条文に沿って、正確なところだけを解説すると、この程度しか説明できません。
各裁判所ごとに基準があることが多い
でも、裁判所が完全に自由に決めているかと言うと、実はそんなことはありません。
あまりに自由に決めてしまうと、不公平な判断が乱発されるおそれがあります。
そこで、多くの裁判所では、裁判所ごとに、これとこれをいくらまで残す、と決めていることが多いです。
総額99万円基準
自由財産拡張の判断にあたって、全国的に、総額99万円基準というものを用いている裁判所が多いです(私も青森で何件も破産事件を担当しましたが、青森地裁でもこの99万円基準を採用しているように思われます)。
具体的には、
(1)現金
(2)預貯金
(3)保険の解約返戻金
(4)自動車
(5)退職金(原則1/8で評価)
(6)過払金
のような拡張適確財産について、総額99万円までであれば、原則として拡張相当(破産者の手元に残す)と判断しているようです。
ちなみに、99万円以下の現金は本来的自由財産として当然に維持できますが、自由財産の拡張にあたっては、この現金も考慮されます。
つまり、現金を99万円以上持っていると、99万円基準の下では、現金だけで99万円の枠を使い切ってしまうことになりますので注意が必要です。
次回は、東京地裁の自由財産拡張基準について簡単に解説していきます。
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