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弁護士が早期独立もしくは即独するなら、どの地域がおすすめ?(地方中核都市編)

By: t-mizo

 これまで、東京都心部で独立する場合東京郊外で独立する場合の記事を書いてきました。
 今回は、地方中核都市で独立する場合について書いていきます。
 ただし、私自身、東京で独立したため、東京で独立する場合のメリット・デメリットはある程度、経験談を踏まえて書けたのですが、地方で独立することはあまり考えていなかったので、的外れな記事になっているかもしれませんので、あらかじめ、その点を差し引いてご覧になってください。

地方での競争は激化している

「東京じゃ食えないから地方で独立しよう。でも、あんまり田舎は嫌だから、県庁所在地あたりにしよう」

 こう考え、地方での独立を検討される方もいるでしょう。
 しかしながら、同じことを考える人は多いものです。
 ここ10年間で、会員数が倍以上になった弁護士会も多いです。
 そして、増加した弁護士は、ほとんどがこのような中核都市に集中しています(もちろん、中小都市で独立される先生も最近は増えていますが)。
 地方にいけば大丈夫だろ、という程度の考え方では、非常に危険ではないかと思われます。
 地方の若手会員は、そんな甘い考えではなく、常に危機感をもって経営しています。

大手事務所や東京からの出張相談

 大手事務所の進出や東京の弁護士の出張相談は、一部の地方の弁護士にとって、悩みの種の一つになっているものと思われます。
 東京の事務所が、地方に出張相談にくる際は、CMをうったり、新聞折込広告をいれたりして、大々的に宣伝することがあります(こういった広告を否定するわけではありません。私自身、ホームページを広告手段として用いていますし。また、過払い金なんて存在すら知らなかったけど、CMで知った、という層もいるでしょうから、一般市民には益となっている側面もあるでしょう)。
 そうすると、債務整理等の、比較的、若手弁護士でも受任しやすいような案件が、こういった事務所に流れていっているのではないかと思われます。

 地方で開業されている若手弁護士にきくと、(本当かどうかまでは分かりませんが)たいてい、

「債務整理や過払い金は、全然来なくなったねー」

と回答されます。
 債務整理をメインにするような事務所はいないから安心、と考えるのではなく、債務整理のような分野は、東京から来る弁護士との競争になる、という意識でいる必要があるのではないでしょうか。

地方の保守性

 東京と地方を比較すれば、地方の相談者・依頼者層は、保守的な傾向にあると思われます。
 東京では、弁護士に相談したい、と思ったら、若い方であればネット等で調べてこられる方も多いように思われます。
 これに対して、地方では、弁護士に相談しようと思ったら、「知ってる弁護士に相談したい」「知り合いに、良い弁護士を紹介してもらおう」と考える方が比較的多いように思われます(もちろん、東京でも、このように考えられる方は多いので、あくまで比較した場合ですが)。
 金額が大きい案件ほど、このような傾向が強いように思われます。

 また、地方の顧問案件は、ベテラン弁護士が顧問弁護士として、ガッチリ抱え込んでいるのが一般的でしょう。
 この牙城を切り崩すのは容易ではありません。

 たとえ、微妙な仕事しかしない顧問弁護士であっても、企業は簡単には切れません。
 地方の社会というのは、非常に狭いものです。
 たとえ、顧問弁護士が微妙でも、切った顧問弁護士と街中で会ったら嫌だなぁ、悪い噂を広められたら困るなぁ、紹介してくれた人の顔を潰すことになりそう、という想いが先行し、我慢して顧問契約を続ける企業が多いでしょう(そして、仕事はまったく依頼しないのに、月々高い顧問料だけとられていく、という企業も多いでしょう)。

 このような地方で企業法務案件を獲得しようとして、

「俺は、サービスで差をつけるんだ」

と考えてがんばっても、芽が出るのはかなり先ではないでしょうか(もちろん、これから顧問弁護士をつけようか、という企業を対象に集客するのは非常に有効でしょう)。

地元出身はやはり有利

 このように、地方は東京に比して保守性が高いのですが、その地方の出身者であれば、この保守性を味方につけることができるでしょう。
 地元の知り合いが多ければ多いほど、「弁護士に相談したいなぁ」と考えた人が、自分の顔を思い浮かべて、来てくれることもあります。
 また、弁護士に相談しよう、と思ったときに、「良い弁護士知らない?」と尋ねる人が多いということは、その分、「●●弁護士なら知ってるよ」と回答して、紹介してくれる例が多いことを意味します。

なんでもかんでも競争が激しいわけじゃない

 地方中核都市では、きちんとホームページを作っている弁護士も多いです(たいてい、若手です)。
 でも、作っているホームページは、名刺代わりのホームページや、どの分野に力を入れているのかよくわからないというホームページも多いです。
 同じようなホームページをただ作っても、埋没してしまうおそれがありますが、きちんと自分の特色を出していけば、目立つ存在になることもそれほど困難ではないでしょう。
 また、東京から出張相談にくる事務所も、全ての分野の事件を集めているわけではありません。たいていは、ある一定の分野に特化して、広告をしています。
 それ以外の分野であれば、十分食い込んでいく余地はあるでしょう。

コストの安さ

 地方では、コストも低く抑えることができるでしょう。

 家賃はもちろん、googleやyahooで広告をする場合のコストもそうです。
 ●●(地方の名称)+弁護士で広告を出す場合、東京都心部だとかなりコストが上昇していますが、地方であれば、まだそれほど高騰していませんので、低めのコストで広告をするのは十分可能でしょう。
 地方では、まだまだ、「ホームページは持っているけど、広告まではちょっとなぁ」という弁護士が多いと思われますので、ちょっとした広告が効果を発揮する可能性があります。

 このほか、電話帳も有効です。
 保守性が高く、インターネットなんて、という人が多い地域では、電話帳がかなりの広告効果を発揮することがあります。
 都心部では、電話帳広告だけでかなりのお金を持っていかれる上、どれだけの人が電話帳を使うかというと疑問があるところですが、地方では、まだまだ電話帳の効果が健在のようです。

もっと、先輩弁護士とのつながりを

 これは、東京で独立する場合も同じですが、先輩弁護士が案件をふってくれるということは、往々にしてあるものです。
 しかも、地方は、弁護士の数が少ない分、付合いも濃密になります。
 きちんと会務活動をこなし、先輩弁護士と親交を深めておけば、「●●先生、こんな事件があるんだけど、良かったら一緒にやらない?」とお誘いがかかることも多いでしょう(話を持ち掛ける対象も、限られてきます)。

 私はあまり偉そうに言える身分ではありませんが、地方では、会務活動や先輩弁護士との付合いを軽視する若手が多くなっていますので、熱心に会務をこなすだけで目立つ存在になるでしょう(逆に、東京のほうが、ガツガツしていて、会務も熱心にやる若手が多いように思われます)。
 また、引退を検討している大ベテランの弁護士であれば、きちんと仲を深めていけば、自分の持っている顧問先や案件を譲ってくれることもあるかもしれません(こういった話は時折聞きます。事務局や事務所名の承継が条件となる場合も多いですが)。
 狭い世界だからこそ、きちんとした付合いが必要となり、そして、有効になるのです(ただし、あまり下心をもって近づくのは厳禁です。そんなのは相手にもわかります。きたら、うれしい程度の気持ちが大事です)。

地方で独立する場合もきちんと戦略をもって

 このように、近年競争が激化している地方では、漠然と事務所を構えて独立するのは危険です。
 ただ、東京都心部ほど競争が激しいということはありません。
 きちんと戦略をたてて開業すれば、十分にやっていく余地はあるのではないでしょうか。

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