良い弁護士の選び方、第2回。
今回は、弁護士の得意分野について解説していきます。
弁護士にも得意分野がある
日本の法令の数は極めて多いです。
総務省行政管理局が提供しているデータによると、平成26年8月1日現在で、8027もの法令が存在します(これに加えて、地方公共団体が制定する条例もあり)。
弁護士といえど、これらの法の全てを把握しているわけではありません。
むしろ、知らない法律、見たこともない法律のほうが多いというのが現状ではないでしょうか。
もちろん、弁護士である以上、今まで見たことがない法律でも、ある程度の対処はできます。
司法試験やロースクールで、法律に関する基本的な考え方を弁護士は叩き込まれていますので、基本を応用しての対処は可能です。
とはいっても、その分野を数多くこなしたか、どれだけ詳しいかによって、提供できるリーガルサービスにも差が出てくるのは否定できないところです。
たとえば、私は交通事故が得意な弁護士を自負していますが、交通事故分野では、以下のような違いが出てくるのではないかと考えています。
交通事故分野を例にみてみよう
交通事故の被害にあって、ケガをした場合、まずは病院に通院します。
治療を受けて、残念ながら、後遺症が残ってしまった場合には、後遺症の認定へとうつります。
後遺症の認定が終わったら、その後、示談となります。
流れとすると、ざっくりとこんな感じです。
交通事故の被害にあったから、訴訟を起こしてくれと依頼を受けて、それができない弁護士(訴訟提起ができない弁護士)はいないでしょう。
ただ、交通事故の事案では、訴訟を起こす前の段階も、非常に重要です。
後遺障害等級として認定されるか否か、認定されたとしても、何級と認定されるかで、賠償金額に大きな違いが生じうるからです。
後遺障害の等級認定にあたっては、医学的な知識も必要と考えられます。
こういった後遺症が残ってますよ、ということを、後遺症について認定する機関に対して立証していく必要がありますが、お医者さんは治療のプロであっても、立証のプロではありません。
そこで、弁護士のほうで、「こういった検査をしたらどうでしょうか」などと提案していき、立証資料をつくっていくことも重要ではないかと考えられます。
このような提案は、司法試験で試されることのない、医学的な知識や後遺障害の等級申請を通じた経験によって差がついてくるところではないかと自負しています。
また、示談をするにあたっても、リスクを踏まえて、そもそも訴訟をすべきかどうか、訴訟をすることによるリターンの見込みやデメリットなども、経験の有無で差がつくのではないでしょうか。
全ての分野に強い弁護士
人生は有限です。
学べる量にも限界があります。
すべての分野について、トップクラスの実力を誇る弁護士なんてのは、存在しないでしょう。
たとえば、離婚問題が得意な弁護士がいたとします。
その人が英文契約書のチェックも得意かというと、そうとは限りません。
弁護士が取り扱う分野は、突き詰めていけば、その一つ一つが非常に奥深いものであります。
「自分は、すべての分野でトップクラスの最強の弁護士だ」と自称する方がいたとすれば、それは、単にそれぞれの分野の奥深さを見誤っているだけではないかとの疑念を抱かざるを得ません。
少なくとも、私は、そういう弁護士には依頼したくはありません。
専門弁護士について
時折、「●●専門弁護士」などと広告されるかたがいらっしゃるようです。
これには、ちょっと注意が必要です。
現在、日弁連のほうでは専門認定制度は設けていませんので、客観的に能力等が担保されているわけではありません(もしかしたら、どこぞの民間団体がそのような制度をつくっているかもしれませんが)。
たいてい、『自称』専門弁護士でしょう。
日弁連の、弁護士の広告に関するガイドラインでも、客観的な専門性が担保されないまま専門表示を許すことには疑問があり、日弁連の専門認定制度を待って表示するのが望ましいとされています。
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