東京都心
東京郊外
地方中核都市
と解説してきましたが、最後に、地方中小都市やいわゆる弁護士過疎地での独立開業について書いていきます。
例によって、私は新宿で独立開業してますので、この記事は的外れな内容かもしれません。ご容赦ください。
日弁連の援助
いわゆる弁護士過疎地で独立開業する場合には、日弁連が手厚い資金援助を行ってくれることがあります。
基本的に無利息の貸付なので、返済義務はあるが、公益活動を積極的にする等の条件を満たせば、返還義務が免除される。
弁護士過疎地で独立開業しようとする人にとっては、いわば常識ともいえる援助でしょうから、ここではあまり詳しい解説はしません。
詳しく調べたい方は、日弁連のサイト等をご覧ください。
このような資金援助は、独立資金に不安がある若手弁護士にとっては、非常にありがたいものです。
ひまわり基金法律事務所という手段
いきなり、地方で独立開業するのには不安がある、という場合には、いったんひまわり基金法律事務所に赴任して、そこでやっていけそうなら、定住するという方法があるでしょう。
ひまわり基金法律事務所は、年間所得額が720万円未満の場合には、不足分を給付されるなど、これまた日弁連の手厚い援助があります。
例によって、弁護士過疎地での独立開業を考えている方には常識でしょうから、詳細な解説はしません。
詳しく調べたい方は、日弁連のサイト等をご覧ください。
コストの低さは魅力
地方中小都市は、事務所の賃料だけでなく、生活費も抑えられるでしょうから、とにかくコスト面での魅力が大きいです。
コストの低さというのは、経営の安定性と精神の安定性に繋がります。
たとえば、手持ち資金が500万円あったとすると、ランニングコストが月60万円であれば、わずか8か月強で資金は枯渇します。その間に、きちんと集客できなければ、経営破たんをきたします。
これに対して、手持ち資金が500万円であっても、ランニングコストが月30万円程度に抑えられれば、16か月強もちます。
弁護士の収入というのは、着手金である程度まかなえる場合もありますが、成功報酬に依存する面も大きいです。
なんとか事件を受任できても、事件が長引けば長引くほど資金ショートの危険が高まります。
そのため、独立したての弁護士は、その大半が、電話が鳴らない日々に戦々恐々とします。
この精神的脅威はすさまじいものです。手持ち資金が尽きるまでの期間なんて簡単に計算できますので、タイムリミットが近づけば近づくほど、眠れぬ夜を過ごすことになります。
事務所があるというだけで宣伝になる
地方中小都市では、弁護士というのは非常に珍しい存在です。
都内では、そこかしこに法律事務所があるので、法律事務所なんて目立つ存在ではありません。
これに対して、地方中小都市では、法律事務所は非常に目立つ存在になるので、開業して、看板を掲げておくだけで立派な宣伝になるのです。
広告費も安い
電話帳は、地方中小都市では非常に有効な広告手段のようですが、電話帳の広告料金は、人口規模によって異なってきます。
地方中小都市では、ターゲットとなる客層は、開業している市町村とせいぜいその周辺に限られてくるでしょうから、電話帳への掲載料(広告費)も安くなるでしょう。
ほかに、地域で出されている新聞があれば、新聞折込広告や新聞広告(紙面での広告です)も同様でしょう。
このほか、そこまでする必要があるか疑問はありますが、googleやyahooのリスティング広告も、ライバルが少ないので安く済むでしょう。
ただし、人口が少なくなるほど、逆に高くなると思われる広告手段もあると思われますので、その点は注意が必要です(大量配布でコストを抑えているような広告手段)。
保守性に注意
地方中小都市では、都心部に比べ、保守性が高いものと思われます。
ネットで調べて相談に来る、という層は、都心に比べると多くないと思われますので、ネットでの広告に過度な期待はすべきではないでしょう(だからといって、ホームページを設けないのも、また、どうかと思われます。若い客層を逃がすおそれがあります)。ネットへの投資は、そこそこにされておいたほうが無難ではないかと思われます。
また、保守性が高い、ということは新しく来た人間に対する警戒心もある程度あるということになるでしょう(これは地域にもよりますが)。
どこの馬の骨ともわからない弁護士に、自分の人生がかかっているような問題を任せたいかというと、疑問があります。
地方中小都市では、あせらず、地域に溶け込んでいくことがより重要と思われます。
誰ともコミュニケーションをとらずに孤立していると、いつまでたっても、異質な存在にしか思われないおそれがありますので、自分から地域の行事や会合に参加する等して、地域の一員になっていくことが重要なのではないでしょうか。
国選・当番弁護
これは地域によっても変わってきますが、その地域の国選や当番弁護が頻繁に回ってくるという地域が多いのではないでしょうか。
刑事事件は日々発生しますが、こういった地方中小都市は、そもそも刑事弁護の担い手が不足している場合が多いと思われるためです(従前は、本庁所在地に事務所を構える弁護士が、持ち回りでなんとか担当していたものを、一手に任せてもらえる可能性がありますから)。
そのため、刑事弁護だけで、ある程度収益を維持することが可能、というのは大きな魅力になるでしょう。
ちなみに、東京の当番弁護・国選は、現在、かなり競争が激しいようです。
7~8件しか事件がない日に、倍以上の弁護士が事件をとりにくる、というのもざらのようです(ちなみに、私は、登録替えの時期の関係で、2014年前期の当番・国選名簿から外れましたので、まだ行ったことがないので、人からきいた話です)。
刑事弁護メーリングリストというものがあり、当番などを変わってほしい人が、交代者を募集する掲示板があるのですが、ここで募集をかけると、一分もたたないうちに、交代者が決まるというのも珍しくないようです(それほど、みんなが狙っているのでしょう)。
私の知り合い
私の知人の弁護士には、地方中小都市で独立開業された方もいますが、皆さん、羨ましいほどにうまくやっていらっしゃいます。
チャンスというと、東京ばかりを見がちですが、地方にも大きなチャンスは眠っている、というのは重要な視点でしょう。
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