これまで、顧問弁護士に関していくつか記事を書いてきましたが、ここで一度、顧問弁護士のメリットとデメリットをまとめていこうと思います。
もっとも、一口に顧問契約といっても、様々な契約内容があり得ます。
ここで紹介するメリット・デメリットは、ただの一例程度に考えてください。顧問契約の内容いかんによっては、ここに書いてあるようなメリットは享受できませんので、契約前にお気を付けください。
メリット
その1弁護士に相談しやすい
弁護士は医師ほど身近な存在ではないでしょう。
また、病気やケガで死ぬことはあっても、弁護士に依頼しないことによって死ぬことはないので(もっとも、法人は病気で死ぬことはありませんが、法的リスクが顕在化することによって、債務超過に陥り、死に至る(倒産等)ことはあります)、緊急性をいまいち判断しづらいです。
さらに、相談すると、ある程度のお金(相談料)をとられるのが一般的です。
そのため、弁護士に相談する、ということ自体、ハードルが高いものといえます。
そうすると、何か法的問題が生じても、弁護士に相談すべきかどうか迷って時間を浪費したあげく、手遅れになってしまうという事態も生じ得ます。
顧問弁護士がいれば、もっと気軽に相談しやすくなるのが一般的でしょうから、これはメリットの一つと言えます。
もっとも、顧問契約や顧問業務にも様々な種類がありますから、顧問弁護士をきちんと活用できるよう注意しましょう。
その2紛争予防や法的リスクの低減が期待できる
企業が社会で活動し、利益を上げていくためには様々な法的リスクにさらされます。
弁護士は、法的問題が生じた後になって、それを解決するために登場する、というのが一般的でしょう。
しかしながら、仮に勝訴しても、莫大な経済的・人的・時間的コストがかかります。敗訴すればなおさらです。
これに対して、何か問題になる前に(行動する前に)弁護士に相談しておけば、紛争となるリスクそのものを低減させることが期待できます(法的問題があるようなスキームについては、法的問題を指摘したり、契約書の内容をチェックしてもらい、自社が有利になるような変更の提案をしてもらったり)。
これは、顧問弁護士がいる、大きなメリットと言えるのではないでしょうか。
その3顧問契約をしないで単発で依頼するより、割安になることもある
弁護士によって変わってくるところですが、顧問契約を結んでいる企業に対しては、通常の法的サービスよりも割安となるような価格設定をしている事務所が多いのではないでしょうか。
わかりやすい例でいうと、法律相談料は通常1時間2万円のところ、顧問契約を結んでいる企業に対しては、1時間5000円で応じる、というのもあり得るでしょう。
また、リーガルリサーチを弁護士に依頼すると、依頼する企業が思っている以上に、弁護士の時間を拘束するのが一般的です。
リーガルリサーチをタイムチャージ(1時間3万円などのいわゆる時給制)で依頼したりすると、月額の顧問料以上の費用がかかることも多いのではないでしょうか。顧問契約を結んでいる企業に対しては、リーガルリサーチは無料で提供する、という弁護士であれば、お得になることがあるでしょう。
もっとも、デメリットの項目で説明するように、顧問弁護士には毎月顧問料を支払わなければいけないのが一般的です。
そうすると、顧問弁護士を利用しなければ、毎月損になることもあります。
そのため、顧問弁護士は有効活用できるよう注意が必要です。
その4素早く柔軟な対応が期待できる
顧問先からの依頼に対しては、素早く対応する、という弁護士が多いのではないでしょうか。
また、顧問契約を結んでいれば、電話やメール等で柔軟に相談できるのに対し、顧問契約を結んでいない企業に対しては、まずは予約をとってもらって、面談することからはじめなければいけない、という弁護士が多いのではないか、と思われます。
さらに、弁護士はけっこう忙しいものです。
弁護士が忙しいときに、顧問契約を結んでいない企業から仕事の話をされた場合、ゆっくりやって良い事件であれば、気軽に請け負ってもらえる場合も多いでしょうが、保全事件のようにスピードが極めて重要な事件については、「ちょっと忙しいので無理です」とお断りされることもあるでしょう。
これに対して、忙しいからと言って、顧問先からの依頼を断る弁護士はほとんどいないでしょう(こういう場合には、徹夜で業務をしたりして、なんとか事件処理することでしょう)。
大変な仕事を断られない(もしくは、断られにくい)というのは、メリットの一つになるでしょう。
その5対内的・対外的に業務がしやすくなることも
何か法的な疑問が生じたとします。
そうすると、社内で回答を導き出すことができ、仮にそれが正解であっても、専門家ではないので不安はぬぐいきれないものでしょう。不安を払しょくするために、部下から上がってきた調査結果を、上司がさら一から調査する、ということもあり得ます。
これに対して、「弁護士がこう言ってる」というのは、非常に強力な後ろ盾になるでしょうから、社内での業務処理がスムーズになることも考えられます。
また、弁護士を悪者にすることも考えられます。
誰だって自分が悪者になるのは嫌なものですから。
たとえば、ある従業員に懲戒処分をするとき、
「君を減給にする」
と端的にいうのと、
「弁護士に言わせると、君にはもっと重い処分も可能らしい。でも、今までの君の功績を考え、今回は減給にとどめておく」
というのでは印象がまったく変わるでしょう。
言われたほうとしては、「弁護士が言っているんだから、法的に争うことは難しいのかもしれない」という想いと「軽い処分に納めてくれて、ありがたい」という気持ちが生じるのではないでしょうか(こういった、言い方一つで紛争リスクを低下させられることもあります。ただ、ウソを言ってはいけませんよ)。
デメリット
その1お金が定期的にかかることが多い
最近は、顧問料0円という弁護士もいるようなので、すべての弁護士がそうというわけではありません。
しかし、毎月定期的に顧問料が発生する契約内容のほうが多いでしょう。
そうすると、顧問料は固定費となりますので、負担感は大きいでしょう。
顧問弁護士を活用できなければ、無駄なお金になるかもしれませんので、弁護士と顧問契約を結ぶ際は、果たして本当に顧問弁護士を有効活用できるのか、検討すべきでしょう。
なお、顧問料0円なら、一見、このデメリットを回避できる、素晴らしい契約内容に見えます。しかし、実際に顧問契約を結んで利用してみると、意外に高くついたりすることもあり得るので、安さに飛びつかずに慎重に検討されたほうが良いでしょう(顧問料の相場の記事もよろしければご参照ください)。
コメントはこちら