前回、取締役が破産をした場合の資格制限を最小限に抑えるのであれば、破産手続開始決定後、ただちに株主総会で選任してもらえば良いと解説しました。
しかし、取締役が会社の株主であるということはよくありますが、破産者の株式は、破産管財人に処分権限がうつってしまいます。
それでは、破産者が有している株式の議決権は誰が行使できるのでしょうか。破産者? それとも、破産管財人?
結論:破産者が議決権を有する
この問題については、実は、判例があります(最高裁判決ではありませんが)。
大阪地判昭和32年12月6日・金融法務事情179号5ページは、以下のように判示しました。
「株主が破産した場合、株式の譲渡その他特別の事情でもあれば格別そうでない限り、破産株主が議決権の帰属主体であることにかわりなく……」
つまりは、破産手続の開始決定後も、株主総会の議決権は破産者に帰属するのです。
もっとも、破産管財人には、破産者の株式を処分(売却などする権限です)する権限があります(破産法78条)。そのため、破産管財人にこの株式を処分されてしまったら、破産者はもはや株主ではないので、さすがに議決権は失ってしまいます(もっとも、基準日も絡んできますが)。
株主総会の招集通知も破産者宛てで
さきほど紹介した判例は、以下のようにも述べています。
「総会招集の通知は破産株主に宛てすべきであって、破産管財人に対してなすべきものでないと解される」
つまりは、議決権が破産者にある以上、株主総会の招集通知も破産者に送るべきなのです(もっとも、郵送の場合には、破産管財人に転送されてしまうでしょうが)。
以上が株主が破産をした場合の取扱いとなります。
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