弁護士ブログ

弁護士費用特約~交通事故の被害にあったとき、損をしないための基本~

 今回は、弁護士費用特約について解説していきます。

弁護士に依頼することで示談金は増額されることが多い

 前回、交通事故の被害者に対して、保険会社が提示してくる示談金額は増額できることが多いことを説明しました
 その理由を端的に書きますと、

(1)保険会社は自身の基準で示談金額を算定する
(2)弁護士は、一般的に裁判基準をもとに示談金額を算定する
(3)保険会社の基準より、裁判基準のほうが高いことが多い

ということになります。
 裁判基準は、弁護士でなくては提示できないというものではありません。
 そこで、自身で交渉する際に、裁判基準で示談金を支払うよう要求するというのは、一つの方法でしょう(もっとも、単に「裁判基準」と言っても、具体的にはいくらだ、何を根拠にしている、と言われてしまうことはあるでしょう)。
 しかしながら、裁判基準はあくまで裁判所の判例をもとに分析された基準です。
 裁判を起こした場合に認められるだろう金額、つまり、裁判が前提となるのです(裁判を起こさなければいけないというわけではありません)。

 日本では、たしかに、弁護士をつけなくても裁判を起こすことは可能です(本人訴訟と呼ばれています)。
 でも、一般的に、本人訴訟は難しいことが多いです。
 保険会社もそれはわかっています。

 ですので、弁護士をつけずに、

「裁判基準で示談金額を支払ってください。支払われないなら実際に裁判を起こしますよ」

と言ったところで、保険会社から

「どうぞ、やれるもんならやってみてください」

と足元を見られる可能性があります(実際には、そういう挑発的なことは言わないでしょうが)。

 これに対して、弁護士は、裁判をするのがお仕事です。
 こう書くと若干語弊があるかもしれませんが、裁判なんて簡単にできます。
 ですので、実際に裁判を起こすかどうかは別にしても、弁護士が

「裁判基準だと○○円でしょ。この金額が支払われないなら、実際に裁判にすることもやぶさかではありません」

と交渉することで、保険会社も裁判を起こされるかもしれないというリスクの高さを感じ、裁判基準での交渉に柔軟に応じることがあります。

 弁護士に依頼することで、実際に裁判を起こさなくても、交渉で裁判基準やそれに近い金額まで増額できることが多いのは、こういった理由からです。

弁護士費用特約で弁護士費用を負担しなくて良いことがある

 このように、弁護士に依頼することにより、示談金額が増額されることが多いといっても、弁護士は、まったく報酬なしで仕事をしてくれるわけではありません(中には、そういった奇特な方もいるかもしれませんが)。
 弁護士に依頼すると、弁護士に報酬を支払う必要があります。
 そうすると、弁護士に依頼することによって、示談金額が10万円上がったけど、弁護士費用が20万円かかってしまって、実際には10万円損してしまったということが生じる可能性があります。
 でも、弁護士費用特約が使えれば、こういった心配はしなくて良いでしょう。
 自分の加入している自動車保険の特約内容を見てください。自動車保険特約が使えるのであれば、こういった弁護士費用の心配は通常、要らないでしょう(弁護士の報酬額にもよってきますので、その点はご注意を)。

Point弁護士費用特約は、300万円まで弁護士費用を支払ってくれる内容のものが多い

 弁護士にもよりますが、弁護士費用が300万円をこえるとなると、よっぽど重い後遺症が残った場合でしょう。
 交通事故でよくある、むち打ちなどのケガであれば、この弁護士費用特約の範囲内でまかなえてしまう、つまり、自身の負担は1円もなく弁護士に依頼出来てしまうのが通常でしょう。
 少なくとも、私が交通事故被害の依頼をお受けする場合には、たいてい、報酬が300万円を超えることはありません。

Point弁護士費用特約を使っても、翌年以降の保険料は通常、上がらない

 自身の保険を使って自動車を修理したりすると、翌年以降の保険料が上がったりします。
 それに対して、一般的に、弁護士費用特約の利用はノーカウント事故扱いとされています。
 したがって、弁護士費用特約を利用しても、通常、翌年以降の保険料が上がるということはないでしょう。
 ただ、これは一般論なので、ご不安であれば、加入している保険会社に、保険料が上がってしまうのかきくのがよろしいでしょう。

Point家族の弁護士費用特約でも使えることがある

 これはあまりご存知の方が少ないのですが、ケガをした被害者自身が弁護士費用特約に加入していなくても、家族が弁護士費用特約に加入していれば、それが使えることがあります。
 ただ、逆に、自分自身の保険に弁護士費用特約がついていても、勤務中の事故である場合など、一定の場合には、弁護士費用特約を使えないことがあります。
 わからなかったら、まずは、加入している保険会社にきいてみるのが良いでしょう。

Point火災保険に弁護士費用特約がついていることがある

 一部の火災保険には、弁護士費用特約がついています。
 ただし、火災保険の弁護士費用特約の限度額は、100万円とされていることが多いです。
 まずは、自動車保険の弁護士費用特約の有無を確認し、次に、火災保険などを調べると良いことが多いです。
 このほか、弁護士に依頼する事件一般に適用される、弁護士保険というものも最近、登場しましたね。弁護士保険に加入されている方はそちらも検討されると良いでしょう。

 弁護士費用特約の解説はこんなところです。
 保険にたくさんオプションをつけているかたは、弁護士費用特約をつけているのに、忘れていらっしゃる方もいらっしゃいます(家族のだったらまったく知らない場合も多いでしょう)。
 交通事故の被害にあったら、弁護士費用特約の有無も忘れずに確認すると良いでしょう。

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