前回は、将来介護費がもらえる要件と金額について解説しました。
今回は、こういった将来の介護費用がいつまでもらえるのか、そしてもうら方式のメリット・デメリットについて解説していきます。
介護費用はいつまでもらえるの?
こういった重篤な後遺症は、一生付き合っていくしかないのがほとんどです。
ですので、介護費用も一生かかってくるでしょう。
したがって、介護費用は死ぬまでもらえる、というのが結論になります。
ただ、この問題は、損害賠償の方法として、
(1)将来の分も含め先に支払ってもらう方法(一時金賠償方式)
(2)毎月もらう方法(定期金賠償方式)
のいずれを採用するかで変わってきます。
一括でもらう場合(一時金賠償方式)のメリット
・たくさんのお金をすぐに自由に出来る
・保険会社が将来倒産しても問題ない
→現代は、保険会社といえども倒産する時代です。
毎月もらう定期金賠償方式を採用した場合には、保険会社が倒産してしまえばおしまいです。
これに対して、一時金賠償方式の場合には、もうすでにお金をもらっていますので、今後、保険会社が倒産しようが特に問題はありません。
一括でもらう場合(一時金賠償方式)のデメリット
・中間利息を控除される
→一時金賠償方式で将来の分も一括してもらう場合には、将来のお金をいまもらうことになるので、その利息分を差し引かれることになります。これを中間利息の控除といいます(つまり、ちゃんと預金にしておけば利息がつくから、利息がつくはずだから、その利息分を減らします、という論理です)。
ただ、この中間利息の控除というのが、くせものです。
理論上は、ちゃんと貯金しておけば問題ない、というのですが、裁判所はこの利息を5%で計算しています。つまり、利息が5%だと仮定して利息分を差し引くのです。
低金利時代の現代、5%の利息がつく預貯金なんてまずないでしょう。
リスクの高い金融商品にでも手を出さない限り、つかない数字です。
5%で計算すると、かなりの金額を差し引かれることになります(こちらのリンクにあるライプニッツ係数というものを参照してください)。
・長生きすると損をする
→介護費用は、死ぬまでもらえるのが原則です。
ただ、将来の分も一括してもらう場合には、交通事故の被害者がいったいいつまで生きることが出来るのか、つまりは余命を認定し、その余命期間の分の介護費用をもらうことになります。
そうすると、認定された余命期間より長生きすれば損をするのに対し、認定された余命期間よりも早く死亡して場合には得をするということになります。
余命は平均余命をもとに計算することになります(ただし、植物状態の被害者の場合には、保険会社は余命期間を短縮するよう主張することが多いです。もっとも、余命期間の短縮には裁判所はかなり慎重に判断する傾向にあります)。
毎月もらう場合(定期金賠償方式)のメリット
・長く生きるほど得
→一時金賠償方式のデメリットがそのままメリットになります。
定期金賠償方式の場合は、介護の必要がなくなるまで(通常は死ぬまで)もらえるのが原則ですので、長生きすればするほど得をすることになるでしょう。
また、中間利息の控除もありませんので、金利が上昇しなくても問題はありません。
毎月もらう場合(定期金賠償方式)のデメリット
・保険会社が倒産するリスクがある
→保険会社も倒産する時代です。毎月介護費用として、24万円を支払う、という内容で和解したとしても、将来、保険会社が倒産しないという保証はありません。したがって、保険会社が倒産するというリスクを抱えることになります(もっとも、保険会社が倒産した場合には、「損害保険契約者保護機構」というセーフティネットがあります。ただ、このセーフティネットも万全とは言いがたいです)。
一時金賠償方式を採用するか、定期金賠償方式を採用するかは迷いどころですが、保険会社の信用性やそれぞれのメリット・デメリットを考慮して判断するしかないでしょうね。
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