自己破産をする際に見逃しがちな財産の解説第3回。
今回は、親が支払っている生命保険について解説していきます。
破産者名義の保険は、原則処分対象になる
破産をすると、原則として、破産者が持っている財産は全てとられてしまいます。
傷病保険や生命保険は、掛け捨て型のものであれば問題ありませんが、積立型の保険も多いです。
積立型の保険は、保険を解約することで解約返戻金が発生します(いうなれば、今まで積み立てていたものを満期前でも返してもらえる、というものです)。
この解約返戻金は財産といえますので、原則として、破産管財人にとられてしまいます(破産管財人が勝手に解約することも可能です)。
判断のポイントは契約者
もっとも、破産者以外の人の財産であれば、とられません。
破産者の財産かどうかは、第一次的には、契約者名義で判断されます(野村剛司・石川貴康・新宅正人『破産管財実践マニュアル〔第2版〕』2013年7月3日・青林書院(以下、『破産管財実践マニュアル』)・128頁参照)。
保険の『契約者』が破産者であれば、原則として、破産者の財産である、と判断されてしまいます。
勘違いをされる方も多いのですが、『保険の受取人』や『被保険者』ではありません。
『被保険者』というのは、単に保険の対象になる人です。その人が死亡したり、ケガや病気をすることで保険金が支払われるというだけです。
『受取人』は、単に保険金を受け取る人です。
破産をする際に問題とされるのは、あくまで解約返戻金です。
『受取人』は、たしかに、お金を受け取る権利はありますが、それは『被保険者』が死亡・ケガ・病気などをすることによって、保険金が発生する場合だけです。『契約者』でなければ『解約返戻金』を受け取ることはできません。
保険の解約返戻金を受け取ることができるのは、『保険の契約者』だけです。
このように、保険の契約者名義が破産者かどうかで、第一次的には判断されることになります。
破産者名義の保険を親が支払っていた場合はどうなるの?
時々あるのですが、破産者を『契約者』にしつつ、保険料は親御さんが支払っているケースがあります(子どものためを想って掛けているようなケースです)。
保険料を支払っていた親御さんとしては、
「保険料は私が払っていたんだから、この保険の解約返戻金も私のものだ」
と思われるでしょう。
確かに、一理ある主張です。
でも、このように、あえて破産者を『契約者』にしているようなケースでは、親御さんとしては保険を自分のものとする意思ではなく、破産者(つまり子ども)に対して贈与する意思でやっている、と推測されます。
そのため、保険料を親御さんが払っていた場合でも、契約者が破産者である以上、原則としてとられてしまいます(『破産管財実践マニュアル』146頁)。
例外
もっとも、原則には例外があります。
破産者がこのような保険の存在をまったく知らなかったという場合には、この保険は親の保険である(つまりはとられない)と扱われることがあります。
でも、こういった場合には知っているよね
そうすると、
「親がこんな保険をかけてたなんて知らなかった」
と豪語される方もいますが、言ったもん勝ちではありません。
以下のような場合には、知っていたとみなされてしまうでしょう。
・保険料が一時的に破産者の口座から引き落とされていた場合
(破産をする際は、通帳コピーを出さなくてはいけないのでバレます)
・年末調整の際に生命保険料控除がされている場合
(源泉徴収票を見ればだいたいわかります)
まとめ
以上をまとめると、次のようになります。
原則
契約者名義が破産者の保険はとられてしまう。
親が保険料を支払っていた場合も同じ。
例外
破産者がこの保険の存在をまったく知らなかったような場合は、とられない。
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