前回は任意整理のメリットについて解説しましたが、今回は、任意整理のデメリットを解説していきます。
・お金を支払う必要があるのが原則
→任意整理は、あくまで支払方法について協議していくものとなります。
過払金が発生しているような場合や時効で消滅するような場合は例外として、弁護士が交渉した後残ったお金は分割で払っていかなくてはいけません。
そのため、3年間~5年間で支払っていける見込みがない場合は、任意整理はとりえないでしょうし、任意整理をしている間は家計の負担も大きくなるおそれがあります。
・弁護士に依頼すると弁護士費用がかかる
→弁護士はボランティアではありません。
お客さんからお金をもらって生きています。
そのため、この弁護士の費用を支払う必要があります。
弁護士によっては、弁護士費用を一括で支払わないと受けない、という人もいると思われますので注意が必要です。
ただ、こういった個人の任意整理事件を多数扱う弁護士であれば、一括で弁護士費用を支払えないからこそ弁護士のところに相談に来るなんてわかっているのが通常です。そのため、弁護士費用を分割で入金してもらったり、法テラスの制度(民事法律扶助というものです)を利用することによって、依頼者の負担が少なくなるように工夫している弁護士も多いと思われます。
弁護士費用の支払方法も含めて弁護士と相談されるとよろしいでしょう。
・信用情報機関に事故情報として登録される
→弁護士が債務整理をすると、通常、その情報が登録されてしまいます。いわゆるブラックリストというものです。
すると、5年程度、新しくお金を借りたり、クレジットカードを作ったり(更新含む)、誰かの保証人となったり、ローンを組んだりということに支障が生じる可能性があります。
ただ、破産や個人再生の場合にはのらないというわけではありません。むしろ、任意整理をする場合よりも長期間のる可能性が高いでしょう。
・選択した業者によっては、ローンで買った物品を持っていかれる可能性
ローンが残っている業者について、弁護士が介入すると、ローンで買ったものは持っていかれることがあります。
たとえば、自動車ローンについて、弁護士が介入すると、ローンで買った自動車を持っていかれてしまうので、外すというような判断をされる弁護士が多いように思われます。
また、クレジットカードについて任意整理をする場合も同様です。
クレジットカードを使って購入した物品で、かつ、支払いがまだ終わっていない物品であれば、カード会社に持っていかれることがあります。
もっとも、全て持っていかれるわけではありません。私の経験上、家電製品のように、転売することによってお金に換えられるような物は持っていかれることが多いように思われますが、その他の日用品等であればそのようなことは通常言われないでしょう。
・法的な強制力がない
→任意整理はあくまで、弁護士と貸金業者との交渉です。そのため、貸金業者に「そういった交渉には応じません」といわれてしまうと、さすがに法的に強制することはできません。
すると、弁護士が介入したにもかかわらず、訴訟を起こされて、最悪、給与差押えなどの強制執行を受ける可能性も否定できません。
もっとも、慣れた弁護士であれば、どこの業者が交渉に応じて、どこの業者が応じないかということは、経験上知っていることが多いので、依頼する前に見通しはたつことが多いでしょう。
・毎月の返済金額が上がる可能性も
→任意整理をする場合、弁護士は、通常、今から支払う利息をカットして、元金だけ返していくよう交渉していきます。
貸金業者としては、利息をとれている間は、支払期間が長くなっても、その分、利息がもらえるので、とくに文句は言わないでしょう(そのため、貸金業者にとっては、「借りては返して」を繰り返す人は良いお客さんになります)。
これに対して、利息がとれなくなってしまうと、貸金業者としては、長期間支払いを待ってあげてもメリットがありません。
そのため、貸金業者としては早期の完済を求めるのが通常です。弁護士が交渉しても、返済期間は3年間~5年間が限界ということが多いように思われます。
すると、人によっては毎月の返済額が上がる可能性もあるので注意が必要です(もっとも、たいていの場合は、毎月の返済額も下がるでしょうが)。
・銀行等の保証会社の場合には、銀行等からの借入れに影響する可能性
→弁護士に任意整理を依頼すると、依頼していない借入れにも影響が及ぶ可能性があります。
典型的な事例としては、銀行の保証会社について、任意整理をする場合です。
銀行の発行しているクレジットカードなどを契約する場合、保証人をつける、ということはそれほどないでしょう。
また、何か担保をとられてることも通常ないでしょう。
でも、銀行が無担保でお金を貸してくれるということはほとんどありません。
たいていの場合は、保証会社がついています(クレジットカードを作るとき、銀行の人から「審査が通ったら~」といわれることはあるでしょうが、これは保証会社の審査を意味するのが通常です)。
たとえば、あなたが銀行から50万円借りていたけど、払えなくなってしまったとします。
そうすると、銀行は貸していたお金をとりっぱぐれて損をするかというと、そうではありません。
あなたが支払えなくなった50万円は、保証会社が銀行に全額支払うことになります(これを業界用語(?)で「ダイベン」といいます)。
このように、保証会社と銀行は、かなり繋がりが強い場合が多いです。
そうすると、銀行の保証会社に対して任意整理をすると、保証会社から銀行に「銀行さん、銀行さん、あなたがお金を貸している○○さん、任意整理しましたよ」という情報がいってしまうことがあります。
こういった情報を把握した銀行としては、「あ~、任意整理してるのかぁ。じゃあ、うちが貸してるお金もどうせ回収できないだろうから、保証会社さん、残り全額払ってよ。権利全部あげるから」となることがあります。
もっとも、この程度のことは、弁護士は通常知っているでしょうから、影響がありそうな場合はリスク説明があるでしょう。
以上が任意整理のデメリットです。
ただ、どういったデメリットがあるかは、ケースバイケースです。そのため、弁護士に相談にいったら、依頼する前にきちんと、自分の場合はどういったデメリットがあるか確認されると良いでしょう。
コメントはこちら