今回から、破産と離婚の関係について解説していきます。
第1回目は、財産分与についてです。
離婚をすると、それまで夫婦で形成してきた財産を分けることになります。
これを財産分与といいますが、破産をする直前の財産分与にはとくに注意が必要です。
不相当に過大な財産分与は危険
破産をすると、破産者が持っている財産は原則として処分対象となります。
そうすると、結婚している人としては、
「どうせ財産を持っていかれるのなら、離婚して、全部配偶者のものにしてしまえ」
と思われるかもしれません。
ただ、このようなことをやっても、無効とされる可能性が高いです。
判例(最判平成12年3月9日・民集54巻3号1013頁)は、詐害行為取消権に関する判例ですが、金額が不相当に過大で、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときは、不相当に過大な部分は取り消しうる、と判示しました。
なんのことかわからないと思いますので、簡単に解説しますと、
『財産分与を装った、過大な(やりすぎな)財産処分は無効となる』
ということです。
典型例や目安
では、どの程度がやりすぎ(過大)となるのでしょうか。
これは、基本的にケースバイケースですが、たとえば、破産する予定の人が、自身の全財産を配偶者に財産分与する、という場合には、過大と評価される可能性が高いでしょう。
また、不動産の名義を移転するというのは、典型的な、過大な財産分与のパターンでしょう。
もっとも、不動産がオーバーローン物件で、ほとんど価値がないような場合には、過大な財産分与とは言いがたいでしょう(その場合には、住宅ローンの組替えをしておかないと、抵当権が実行されてしまうでしょうが)。
財産分与の基本は、
50:50
です。
これを著しく超える財産分与をしてしまうと、無効とされる可能性が出てきます。
過大ではない財産分与はどうなるの?
上で紹介した判例は、過大な財産分与の扱いについては述べていますが、『過大ではない』財産分与については、とくに述べていません。
そうすると、『過大ではない』財産分与は問題ないのでしょうか。
実は、この点は、見解が分かれているところです。
・『過大ではない』財産分与も、偏頗弁済として無効となる(破産法162条)。
・財産分与は、取引のようなものではなく、単に婚姻中に形成した財産の清算だから、『過大ではない』財産分与は無効にはならない。
どちらの立場をとるかについて、判例は明示していません。
そのため、相当な範囲の財産分与をした場合でも、破産をすると無効とされてしまう可能性があることは認識しておくべきでしょう。
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