今回は、東京地裁における自由財産の拡張基準について解説していきます。
※経験に基づく情報も含まれていますので、ご注意ください。
基本は20万円基準
東京地裁では、現金は99万円まで維持できます(破産法34条3項1号)が、これに加えて20万円基準が採用されています。
簡単にいうと、以下にあげる財産のうち、20万円以下のものは原則として破産者の手元に残してもらえます。
(1)預貯金
(2)生命保険の解約返戻金
(3)自動車
(4)敷金
(5)電話加入権
(6)退職金の8分の1
以下では、勘違いしがちな点について解説していきます。
ケース10万円の生命保険と15万円の生命保険がある場合、両方維持できるの?
このケースの場合は、20万円基準でストレートに維持することはできないでしょう(違う基準での自由財産拡張を求めることになるでしょう)。
たしかに、
・解約返戻金が10万円の生命保険
・解約返戻金が15万円の生命保険
は、それぞれ個別にみれば20万円を超えません。
しかし、20万円基準というのは、あくまでも『財産の類型ごと』に見られているようです。
したがって、上記のように複数の保険がある場合は、合算して計算されるので、
保険の解約返戻金の合計額が25万円
→20万円基準では、維持できない
という結論になります。
ケース10万円の生命保険と15万円の自動車がある場合、両方維持できるの?
このケースであれば、20万円基準で維持できるでしょう。
保険の解約返戻金と自動車とでは、『財産の類型』が異なります。
したがって、
・保険の解約返戻金が10万円→20万円基準を超えない
・自動車の価値が15万円→20万円基準を超えない
と判断され、どちらも20万円基準を用いて維持できるでしょう。
ケース99万円の現金と残高計15万円の預貯金、両方維持できるの?
東京地裁の基準に従えば、原則として維持できることになるでしょう。
前回、総額99万円基準で自由財産拡張をする場合、現金の額も考慮される、と解説しました。
そうすると、総額99万円基準を採用している裁判所では、あわせて99万円までしか維持できないことになります。
しかし、東京地裁が設けている上記基準は、総額99万円とは別のものです。
東京地裁の上記基準を用いる限りではありますが、総額99万円の縛りがないので、維持できるでしょう。
ケース評価額40万円の自動車は維持できないの?
このケースでは、上記の20万円基準で維持することはできないでしょう。
そうすると、自動車を維持するための方法は2つ考えられます。
1つ目:評価額(40万円払って)で自動車を買い取る
たとえば、現金を50万円持っているのであれば、現金は全額維持できるでしょう。
そこで、手元に残してもらえた現金などの財産を用いて、自動車を買い取るのです。
ただ、この方法は、自動車を買い取れるだけの財産を持っていないような場合には使えません。
2つ目:総額99万円基準での自由財産拡張を求める
東京地裁では、総額が99万円以下である場合には、破産管財人の意見を踏まえた上で、裁判所が自由財産拡張の判断をしているようです。
「東京地裁では……自由財産の総額が99万円以下となる場合は比較的緩やかに判断し、99万円を超える場合はより慎重に判断をしています」(全国倒産処理弁護士ネットワーク編『破産実務Q&A200問』・平成24年12月15日・株式会社きんざい・53ページ)ので、総額が99万円以下の場合には認められやすいでしょう。
ちなみに、この総額99万円以下の自由財産拡張と20万円基準とは、併用されていないように思われますので、注意が必要です(つまり、総額99万円の判断にあたっては、20万円以下の財産も計算にいれて評価されます)。
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