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財産なんてないから遺言なんて要らないよ、という人ほど遺言を書くべき3つの理由

 相続の場面では、財産なんてないから遺言なんて要らないよ、という人ほど問題がより深刻になる可能性を秘めています。
 ここでは、その理由を解説していきます。

理由1:土地や建物は財産だからです

 財産なんてないよ、という人で、本当に何も財産を持っていない人は遺言を書く意味はほとんどないでしょう。
 ただ、財産なんてないよ、という言葉に続いて、俺には、この家くらいしかないよ、と続く方が多いです。
 今、住んでいる住居(土地や建物)は立派な財産です。
 不思議なことに、誰かに賃貸している不動産であれば、財産という認識があっても、自分が住んでいる家(持ち家)が財産であるということを失念している方が多いです。
 
 自分が所有している土地や建物は財産であり、相続の対象となることに注意すべきです。

理由2:日本は分割相続が原則だからです

 日本の法律では、財産は分割して相続されるのが原則です。
 長男が単独で相続するという制度も、制度としては考えられますし、そういった相続法を定めていた国もありました。
 しかし、あくまで、現代日本では、分割相続が原則です。
 これは、土地や建物でも同じです。
 そんなこといっても、土地ならまだしも、建物をどうやって分割するんだよ、と思われる方はいらっしゃるでしょう。
 いやいや、ご安心ください。分割されるということは変わりませんが、何も、重機等を使って、建物を解体して分割するのではありません。
 ちょっと法律的な回答になりますが、所有権という権利が分割されるのです。

 たとえば、子どもが3人いて、相続人はこの3人だけとします。
 この場合、一人当たり1/3ずつ、土地や建物の権利を持つことになるのです。
 土地や建物は、この3人で共有している状態になり、これを誰かの単独名義にするには、3人で遺産分割協議をして決めなければいけません。

 相続人が3人程度であれば、まだ話は簡単にすみます。
 ただ、遺産分割協議をせずに放置しておくと、権利はどんどん細分化されていきます。
 たとえば、1/3の権利を持つ人が亡くなると、その1/3の権利もまた分割して相続されていきます。
 長期間、問題を放置しておくと、権利者が何十人もあらわれることがあります。
 こうなってくると、話をするのも一苦労です。

理由3:家を売らざるを得なくなる可能性があるからです

 たとえば、不動産の他に預貯金を1000万円持っていたとします。
 すると、遺産分割協議を行う際、不動産は相続人Aさんの名義にするけど、代わりに預貯金1000万円を相続人Bさんに全額あげる、といったような妥協案が柔軟に考えられます。
 現金化しやすい財産、分けやすい財産があるほど、柔軟な話合いができますので、遺産分割協議も成立しやすいです。

 これに対して、不動産の他に財産が何もない、という場合はどうでしょう。
 その不動産に誰も住んでいなければ、不動産を売ってお金にかえて、そのお金を分割するという方法が考えられます。

 しかし、相続人の誰かが住んでいるとなると、問題は複雑化します。
 相続不動産に実際に居住している人としては、そこに住み続けたいと考える人が多いでしょう。
 だから、この不動産の名義を自分のものにしてくれ、と主張します。
 そうすると、他の相続人としては、ポンと気前良くハンコを押してくれるのであれば良いのですが、不動産の権利をあげても良いけど、かわりにお金をくれ、などといってくることがあります。
 不動産以外にお金も相続していれば、前述したように、お金はあげる、という妥協案の提示が考えられます。
 また、ある程度、自分の預貯金があれば、そこからいくらか渡す、という方法も考えられます。
 しかしながら、不動産の権利をもらう条件として、何かあげたいけど、何もない、ということが往々にして発生します。
 これが、財産なんてない、という人ほど遺言を書くべき最大の理由です。

 不動産のほかに財産がないから、といっても、それで問題は解決しません。
 お金がないなら仕方ないよね、なんて、法律は許してくれません。
 法律は、他の相続人も平等に保護しています。
 不動産の権利が欲しいといっている人が、お金を用意できないのであれば、最悪、その不動産から出て行って、これを売ってお金にかえた上で分割する、という方法をとらざるを得なくなる可能性があります。

 このように、不動産の他に財産がない、という場合は、遺言を書かなければ複雑な問題が発生し、場合によっては、そこに住んでいる人の生活が一変するような事態を招きかねません(もっとも、遺言があっても、遺留分分割請求権の行使が考えられますが)。
 身内の方で、遺言なんて要らないよ、という人にはこのページを印刷して、そっと見せてあげると良いかも知れませんん。

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