今回は、勘違いされている方が意外に多いテーマの解説です。
会社が破産をすると、たしかに、その会社は消滅します。
会社が消滅するんだったら、自分が負ってた義務も消えるよね、やったラッキーと思われる方もいます。
でも、そんなうまい話はそうそうないもんです。
会社が破産をすると、破産管財人が選任される
会社が裁判所に破産を申し立てると、裁判所が受理して、それで手続終了というわけにはいきません。
通常は、破産管財人が選任されます。
破産管財人は、その会社が持っている財産をお金にかえた上で、債権者に平等に配当します。
この現金化の一環として、会社が持っている権利(お金の請求権等)の現金化を試みます。
権利者が破産をしても、義務の内容に変化はありません
ただ、ここで重要なのが、権利者が破産をしたからといって、もともとの権利の内容が変わるわけではない、ということです。
たとえば、X社から土地を3000万円で購入したとします。3000万円の支払期日が平成30年3月末日とされていた場合、X社が破産をしても、お金の支払日に変動はありません。
購入者(お金を支払う義務がある人)としては、あくまでも当初の約束どおり、お金を支払えば良いだけです(契約内容によりケースバイケースではありますが、原則はこうなります)。
破産管財人からの申入れ
しかし、破産管財人が当初の約定日である平成30年3月末日まで待ってくれるかというと、そうもいきません。
破産手続は迅速に終わらせなければいけませんので、そう何年も待ってはくれません。
破産管財人はおそらく、
「支払期日が平成30年3月末日というのはわかるんですけど、破産手続の関係上そんなに待つわけにはいかないので、できればもっと早く支払ってもらえませんかね」
というような交渉をもちかけてくるでしょう(交渉もなしにすぐにサービサーに売却するケースもありますが)。
破産管財人からのこのような申入れに応じる必要があるかというと、答えはノーです。
別に応じなくても問題はありません。
その場合は、後述するサービサーに権利を売却されるでしょう。
破産管財人からの交渉はチャンスかも?
でも、これって実はチャンスになったりします。
破産管財人はこのとき、ジレンマを抱えることになります。
・お金を早期に回収したい
・でも、法的手段に訴えても勝ち目はない
そうすると、破産管財人としては、ある程度のディスカウントを申し入れてくることもあります。
たとえば、「100万円割引するので、今すぐに残りのお金を支払ってもらえませんか」、といった具合にです。
ある程度、体力がある企業からすると、この場合には減額のチャンスになりえます。
相手(破産管財人)の強みと弱みを理解した上で、交渉すると良いでしょう。
破産管財人と交渉なんて初めての経験だから、よくわからない、という場合には弁護士に交渉を依頼するのも良いでしょう。
ちなみに、たとえば返済期日が1ヶ月後など近い場合には、交渉の余地はほぼないと考えたほうが良いでしょう。
破産管財人としては、1ヶ月だけなら待って、全額を回収しようと試みるでしょう。
破産管財人がサービサーに権利を売却することも
破産管財人は、このように、まずは自身の力で、できるだけ多くの金額を回収しようとしてくるでしょう。
しかし、それでは回収できないことも多々あります。
そこで、債権管理回収会社(サービサー)というところに権利を売却してしまうこともあります。
サービサーは買い取った権利を、約定どおり行使してくるでしょう。
もちろん、たとえば、上記のような、3000万円を支払ってもらう権利を3000万円で買い取ってくれるサービサーはいません。
権利の内容次第で、ある程度、割引をせざるを得なくなります。
そこで、破産管財人としては、サービサーに権利を売却した場合と、義務者から出てくる提案とを比較した上で、有利なほうと和解することが多いのではないでしょうか。
(もちろん、破産という偶然の事情で、義務内容が縮減されることを良しとしない、というスタンスの管財人や裁判所もいるでしょうが)
まとめ
このように、権利者が破産をしても、破産管財人が回収を試みるか、権利が売却されて第三者にうつるのが通常です。
権利者が破産をしたからといって、当然に、義務が消滅するということはありませんのでご注意を。
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