交通事故の被害にあい、自動車が故障等したら、代車の費用を請求できることがあります。
それでは、今回は、代車の車種(グレード)について解説していきます。
代車の車種がなぜ問題になるのかというと、被害者の方としては、代車の車種は被害車両と同じか同程度のグレードのものを要求したいところでしょう。
しかしながら、これが認められず、グレードが下のものしか認められないことがあるからです。
外車の場合、同じ車種の代車が認められたのは20.7%
裁判例を詳細に分析した書籍(海道野守『裁判例、学説にみる交通事故 物的損害 代車料 第2集―4』平成22年6月30日・保険毎日新聞社・22ページ)によると、被害車両が外車であった場合、代車として使用する車両について、外国車が認められたのは、20.7%でした。49.6%が国産乗用車の限度でしか認められていません。
この傾向は、とくに、高級外車の場合に顕著です。
では、なぜ、被害車両と同じ車種の代車を要求することが認められないのでしょうか?
代車のグレードが下がることがある理由
判例(大阪地判昭和62年1月29日・交通民集20巻1号154ページ)は、「被害者としても信義則上損害の拡大を最小限度に抑える義務がある」ことを理由にあげています。
取引上の信用を失うから、同等のグレードにしたい⇒×
京都地判平成5年10月27日は、被害車両がベンツの事案です。被害者が不動産会社に勤務し、業務用にこのベンツを用いていたのですが、裁判所は、代車としてベンツを使用する必要性があったとまで認めることはできず、国産高級車で足りる、としました。
営業用の車だから、同等のグレードにしたい⇒×
東京地判平成7年3月17日・交通民集28巻2号417ページは、被害車両がキャデラックのリムジンの事案です。被害者は、営業で使用していたので、同じリムジンである必要性を主張しましたが、裁判所は、リムジンを代車に使用しないことによって営業活動に支障があるとは認められず、国産高級車で十分代替できる、と判断しました。
以前から外車を使っていたから、同等のグレードにしたい⇒×
よく見かける理由ですが、残念ながら、この場合も認められないでしょう。東京地判平成8年3月6日・交通民集29巻2号346ページも、以前から外車に乗っていたという理由では、ベンツを代車に使用する根拠にはならない、としつつ、被害車両が取引先との連絡や接待用に使用されていたことから、国産高級車である「クラウン・マジェスタ」クラスが相当である、としました。
被害車両が高級外車の場合、高級国産車の限度で認められる傾向にある
ここでお気づきになられた方もいらっしゃるでしょうが、これらの裁判例は、外車を代車とすることは否定しつつも、『国産高級車』の限度では認めているのです。
もちろん、代車使用の必要性という要件をクリアする必要はあるものの、裁判所はさすがに、一番安い軽自動車を使え、とまでは言っていないのです。
被害車両が高級外車である場合には、同じ高級外車の代車が認められる可能性は低いことを認識しつつ、場合によっては、国産高級車であれば代車が認められることがある、と理解されておくと良いでしょう。
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