今回は、任意整理のメリットを紹介します。
任意整理というのは、弁護士が貸金業者と交渉して、今後の支払方法を協議する方法です。
私の経験上、債務整理をする方の多くはこの任意整理を選択されます。
・貸金業者からの督促がとまる
→破産や個人再生でも同様のメリットはありますが、弁護士が介入すると貸金業者からの督促が止まります。
これは、貸金業法の21条1項9号で定められています。
貸金業者は、弁護士が受任通知を送った後は、弁護士を飛び越えて、直接債務者に連絡することはできなくなるので、貸金業者からの督促に悩まされている人には大きなメリットになるでしょう。
・支払すべき金額が減る可能性がある
以下に紹介する3つの方法で減る可能性があります。
1.過払金
→グレーゾーン金利という言葉をきいたことがある方もおられるでしょうが、大多数の貸金業者は、以前、利息制限法で定められた上限金利を超える利息をとっていました。
このような支払う必要がなかった利息を考慮すると、支払うべき金額が減ったり、場合によっては、こっちから「お金を返して!」と請求できる場合があります。
2.遅延損害金がカットされる可能性
→弁護士は、貸金業者と交渉する際に、通常、未払いの利息や遅延損害金をカットするように交渉していきます。
一部の貸金業者はカットに応じませんが、応じる業者のほうが多いでしょう。
そのため、多額の遅延損害金や利息を請求されているという方であれば、大きなメリットがある可能性があります。
3.利息を0%にできる可能性がある
→弁護士は、通常、今から払っていく利息(将来利息と呼ばれます)をカットするように交渉していきます。
これは一見するとメリットが大きくないように見えますが、たとえば元金50万円、利息が18%の場合、年間の利息は単純計算で9万円になります(実際には毎月返済するのでもう少し複雑ですが)。
こういった、支払うべき利息をカットできれば、その分、支払うべき総額も減ることになります。
・月々の返済額が減額される可能性がある
→任意整理をする場合、弁護士は通常、元本を3年間~5年間の分割弁済で支払っていくよう交渉していきます。
もちろん、全部の業者がそうとは限りませんが、毎月の支払金額が多い業者であれば、毎月の支払額を減額できる可能性があるでしょう。
・任意整理する業者を選択できる
→破産や個人再生といった法的整理の手法は非常に強力な手段ではありますが、破産法や民事再生法の厳格な規律が適用されます。
法的整理の場合には、特定の業者だけ、手続きの対象から外すことは許されません。
すると、「この貸金業者からの借入れには保証人がついている。保証人にだけは迷惑をかけられないから、ここは外してくれ」という要望は、法的整理では実現できません(もっとも、住宅ローンであれば個人再生の住宅ローン特例がありますし、民事再生では別除権協定というものがありますが)。
これに対して、任意整理の場合は、特定の業者だけを選択して整理することが可能です。
保証人がいる借入れや住宅ローン、自動車ローンのように、担保がついていて、弁護士が介入すると担保となっている自動車・住宅をとられてしまうような借入れは外すことができます(ただし、受任する弁護士としては、偏波弁済にならないように注意は必要でしょう)。
・原則として、自分の財産に影響はない
→破産をすると、基本的に自分が持っている高価な財産はとられてしまいます。
これは、破産という制度が、破産者の財産をお金にかえて、配当するという制度であることからきます。
これに対して、任意整理の場合には、財産処分は原則として必要ありませんので、今ある財産を処分することなく手続ができるのが通常です。
・利用するために必要な条件はとくにない
→破産や個人再生には、利用するために必要な条件があります。
自分の収入・財産で問題なく支払っていけるような人であれば、破産や個人再生を利用できないのが原則です。
これに対して、任意整理には、このような条件がありませんので、どういった方でも利用できるのが原則です。
・官報にのらない
→破産や個人再生をすると、『官報』という国が発行している新聞のようなものに名前がのってしまいます。
これに対して、任意整理では、『官報』には名前がのりません。
もっとも、官報にのったからといって、家族や近所の誰かに知られてしまうというものではないでしょうし(官報、読んだことあります?)、任意整理をしたからといって絶対に家族などに知られない、というものではありませんので注意が必要です。
・資格制限がない
→破産をすると、会社の取締役は一度退任しないといけなくなります。
また、警備員や生命保険の募集人など一定の職業に一時的に就くことができなくなります(基本的には、国家資格で、かつ、財産を扱うような仕事ですね)。これを制限職種といいます。
任意整理の場合には、このようにな仕事への影響は通常ないでしょう。
・裁判所にいく必要がない
→任意整理は、あくまでも弁護士と貸金業者との交渉ですので、裁判所はからみません。
ですので、当然ながら裁判所に行く必要はありません。
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