破産をすると、たしかに借金は免除になります。
しかしながら、ありとあらゆる借金が免除になるわけではありません。
破産法は非免責債権(253条1項但書)というものを定めており、これらは仮に破産をしても免除されないので注意が必要です(このほか、財団債権や別除権、取戻権にも免責の効力は及びません)。
非免責債権の種類
非免責債権は以下のとおりとなります。
(1)租税等の請求権
(2)破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
(3)破産者が故意または重過失により、他人の生命または身体を害したことに基づく損害賠償請求権
(4)養育費などの特定の親族関係に基づく義務
(5)従業員の給料などの支払義務
(6)わざと、もしくは、ミスで債権者名簿に記載しなかった借金
(7)罰金等の請求権
このうち、事業者がとくに注意すべきは、(1)、(5)、(6)でしょう。
それぞれ順番に解説していきます。
税金は免除されません
会社経営者や事業者の方で見逃しがちなのが代表者個人の税金滞納です。
経営者の方は、収入や資産も多い方が多いので、税金などもかなりの金額になってきます。
しかし、会社の状況が芳しくなくなると、まずは取引先への返済を優先し、税金は後回しにされる方が多いです。
商売というものを考えると、やむをえないのかもしれませんが、これを長期間続けると危険です。
代表者個人の税金や健康保険料などを数百万円も滞納している方は、まれではありません。
そうすると、破産をしても数百万円もの借金が残ることになり、再起の妨げになります。
給料などは免除されません
個人事業主の方がとくに気をつけたいポイントです。
未払いの給料などは免除されませんので注意が必要です。
ただ、これは後述するように、法人化していれば避けられるリスクでしょう。
債権者名簿から漏れてしまった借金は免除されません
これも、個人事業主の方にとくに気をつけて欲しいポイントです。
商売をしていると、様々なところに借金ができます。
帳簿をきちんと作って管理されている方であれば良いのですが、「どこからいくら借りてるのかもよくわからない」となると、大変です。
弁護士の調査能力にも限界があります。ある程度であれば、帳簿類や通帳から発見できますが、それだけでは漏れが生じることがあります。
どこからいくら借りているかは、きちんと管理しておくようにしておきましょう。
法人化することによるリスク回避
債権者名簿からの漏れは、管理さえしっかりしていれば、ある程度のリスク回避はできるでしょう。
ただ、給与の未払い等は、なかなか回避しがたいリスクです。
給与未払いが生じた時点で、すっぱりと商売を諦められなら話は別ですが、従業員への給与を遅配しつつ商売を続けられる方が多いように思われます(そして、破産をするときには数ヶ月分滞納している)。
そうすると、個人事業主の方は、破産をした後も未払いのお給料を払っていかなくてはならないことになります(労働者からすると、当然、と思われるでしょうが)。
しかし、ここで免責や非免責債権と解説していましたが、実は、『免責』は個人の破産者にしかない制度です(破産法248条)。
会社のような法人には免責制度はありません。
となると、会社の借金は、破産後どうなるのか、疑問に思われる方もいるでしょう。
ポイントは、破産をすることで、会社は解散して消滅するという点です。
義務者である会社が消滅するので、もはや返済を求めることはできません。
これは非免責債権であろうが、変わりありませんので、非免責債権に該当するような借金でも、それが法人の負債であれば事実上支払いが免除されることになります。
ですので、法人化はリスク回避の方法としても有用といえますね。
ただ、法人化していても、やはり代表者が公租公課を滞納しているケースはかなり多いように思われます。
法人化していても、代表者個人の税金などは免除されませんので、ご注意ください。
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