交通事故の被害にあった場合、慰謝料や休業損害などの請求が考えられますが、それより何より、被害者としては、まずは治療費を支払ってもらいたいものです。
もちろん、治療費は請求可能です。
治療によって完治するケガの場合には、完治するまで支払われるのが通常でしょう。
しかしながら、交通事故によるケガは、時に深刻な被害をもたらします。
場合によっては、これ以上、治療によっては症状改善が見込めないという場合もあります。
このように、治療による症状改善が見込めない状態を『症状固定』といいます。
『症状固定』となったしまった場合、その後の治療費は支払ってもらえるのでしょうか?
症状固定後の治療費はもらえないのが原則
残念ながら、『症状固定』後の治療費はもらえないのが原則となります。
なぜなら、治療による症状改善が見込めない以上、その後の治療は(少しインパクトのある表現となりますが)無駄な治療となるのが一般的だからです。
治療をしてもこれ以上良くならないけど、患者がそれでも病院に通いたい、と主張しても、裁判所は認めてくれないのが原則です。
『症状固定』となった後も通院を続けたい場合は、実質的には、慰謝料を使って通院することになるでしょう。
そのため、慰謝料はきちんと正当な金額を支払ってもらうことが重要です。
例外的に症状固定後の治療費がもらえる場合
ただ、原則には例外があるものです。
例外的に、症状固定後でも治療費を支払ってもらえる場合はあります。
たとえば、治療による改善は見込めなくても、治療をしないで放っておくと 悪化するという場合には、悪化させないための治療費は支払ってもらえるでしょう。
このほか、裁判例(名古屋高判平成2年7月25日判例時報1376号69ページ)では、右足が切断された事故で、症状固定後に義足を作成するための入通院について、治療費を認めているなどしています。
基本的にはケースバイケースとはなりますが、『症状固定』後の治療費はやはり支払ってもらえないのが原則です。
そのため、『症状固定』の時期は重要な問題となります(とくにむち打ちなどの事例では、症状固定の時期が問題となりやすいので、いずれ解説します)。
加害者の保険会社の担当者から、「そろそろ症状固定にして、示談の話をしませんか?」といわれたら、それは治療費の打切りを意味しているのでご注意ください。
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