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示談をした後の治療費を支払ってもらえないか~交通事故の被害者のために~

By: Jhayne

 以前、症状固定後の治療費の問題について解説しました。
 これは、症状固定後、示談をするまでに支払った治療費を加害者に請求できるか、という問題でした。
 今回は、『示談をした後』に必要な治療費を支払ってもらえるのかについて解説します。

示談をした後に治療費を請求しても認められないのが原則

 交通事故治療は、時に長期に及びます。
 今後も治療費がかかるかもしれないが、そのときはそのときでまた請求しよう、とりあえず、今のところはこれで勘弁してやろう、と思って示談書にサインしてはいけません。
 示談書には、一般的に『清算条項』とよばれるものがついています。
 この示談書に書かれていること以外の権利義務はない(つまりは、今回の事故に関して、慰謝料や治療費はこれ以上請求しませんよ、という意味を持っています)ということを確認する条項です。
 この条項がある以上、後々になって、治療費がさらにかかったから追加の治療費を支払ってくれ、と請求しても、保険会社は通常応じてくれません。
 あわてて弁護士のところにかけこんでも、よっぽどの事情が無い限り、これを覆すのは困難です(追加の治療費がかかることが示談した当時は予測できなかった、というような事情がなくてはいけません)。
 示談をする際には、まずは、これ以上治療費は支払ってもらえない、ということを認識すべきでしょう。

将来の治療費を支払って欲しい場合は、示談書にその旨を盛り込むこと

 もっとも、示談書に、『将来治療費がかかったらその分はまた支払う』、という条項をいれておけば請求は可能でしょう。
 ただ、加害者や保険会社がこういった不確定な条項を盛り込むことに応じるかというと、まずありません。
 なぜなら、最終的な損害がいくらになるのかまったく予測がつかず、思わぬ出費になる可能性があるからです。
 
 示談時に、見積もりをとるなどして、将来の治療費がいくらになるのかきちんと計算し、金額を具体化する必要があります。
 たとえば、インプラントやブリッジで歯科捕てつをしているようば場合には、インプラントやブリッジの耐用年数が何年で、平均余命の何歳まで交換が必要だから、●●円を請求します、といったかたちになります。

 ただ、示談後の治療費は、以下に記述するように、そう簡単には認められません。

そもそも、将来の治療費はなかなか認められない

 症状固定とは、それ以上治療による改善が見込めない状態を言います。
 つまりは、これ以上治療をしても無駄になってしまう状態です。
 これ以上の治療が無駄になる以上、将来の治療費も必要ない、という結論になるのが一般的です。
 ただ、まったく認められないかというとそうではありません。

 たとえば、治療による改善は見込めないものの、治療を続けないと症状が悪化してしまうような場合には、その状態を維持するために治療を継続する必要があります。したがって、将来の治療費も認められるでしょう。
 また、将来、手術が必要な場合には、その手術費も認められるでしょう。

示談をした後に後遺症がでたらどうすればいいの?

 こういうふうに解説すると、示談をするときは分からなかったけど、後々になって後遺症が出た場合はどうすればよいのか疑問に思われる方もいるでしょう。
 その場合には、示談をした当時には、こういった後遺症が発生することを予測できなかったということを立証し、過去の示談(示談書に記載された清算条項)が無効(錯誤無効)である、とたたかっていくことになります。
 したがって、予測できない損害を怖がって示談をしないのは、得策ではありません。むしろ、損害賠償請求権が時効で消滅するリスクすらありますのでご注意を。

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