破産の資格制限に関する解説。今回は、生命保険の募集人について解説していきます。
生命保険の募集人は、警備員と同様に、破産の資格制限の代表例としてあげられています。
ただ、規律の仕方は、警備員の場合とかなり異なるので注意が必要です。
破産手続中は登録できない
保険業法276条によれば、生命保険の募集人は、内閣総理大臣の登録を受けなければならない、とされています。
そして、保険業法279条1項1号では、内閣総理大臣は、『破産者で復権を得ないもの』の登録を拒否しなければならない、とされています。
そうすると、破産手続が終わるまでの間(正確には免責が確定するまで)は、新規に生命保険の募集人にはなれないことになれます。
もちろん、破産手続が終わってしまえば(免責が確定すれば)、このような制限には引っかかりませんので、生命保険募集人になることは問題ないでしょう。
現在、生命保険の募集人である人は破産で資格を失うの?
では、本題に入りましょう。
現在、生命保険募集人の職にある人は、破産をすることによって資格を失ってしまうのか?
法人の場合は、破産することによって資格を喪失してしまいます。
すなわち、保険業法280条3項、同条1項4号によれば、
「特定保険募集人である『法人』について破産手続開始の決定があったとき」
登録が効力を失うとされています(つまりは、当然に資格を喪失します)。
しかしながら、保険業法280条1項4号は、『法人』と明確に規定していますが、『個人』については、対象にしていません。
そのため、生命保険募集人である『個人』については、保険業法280条3項によって、資格を当然に失うということはないでしょう。
じゃあ、生命保険募集人は破産しても問題ないの?
破産によって当然に資格を失わないとすると、生命保険の募集人は破産しても資格にはまったく影響ないのでしょうか?
いいえ、さすがにそんなことはありません。
保険業法307条1項1号によると、生命保険の募集人が破産をしたとき、内閣総理大臣は、生命保険募集人の登録を取り消したり、6か月以内の業務停止を命じることができる、とされています。
ただ、絶対に登録を取り消されたり、業務停止を命じられるわけではありません(その場合、法文では「~しなければならない」と規定されますが、保険業法307条1項は「できる」と規定しているだけなので、取消等は任意的です)。
そのため、生命保険の募集人は、破産をすると、確実に資格を失うわけではないが、資格の取消し等を命じられうる不安定な立場に立たされることになります。
会社の就業規則にも注意
このように、法律上は、破産によって資格を当然に失うわけではありませんが、保険会社の場合は、就業規則に『破産をしたときは解雇』と規定されていることが非常に多いです。
バレなきゃいいじゃん、と思われるかもしれませんが、破産をすると官報という国が発行している新聞のようなものに名前がのります。
そして、保険会社は、この官報をチェックしていることが多いので、会社に黙って破産→官報でバレて解雇というパターンが想定されますので注意が必要です。
他の債務整理もご一考を
このような資格制限のため、警備員のケースでも紹介したように、生命保険の募集人の方は、任意整理や個人再生の方法を選択される方が多いです。
また、失礼ながら、生命保険の募集人の方は、仕事が原因で借金をしてしまっている方も多いです(ノルマ達成のため)。なかなかうまくいかず、ノルマ達成のために借金をするという状況が変えられないようであれば、転職前提で破産を検討するのも手ではないでしょうか。
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