前回、ローンが残っていない自動車を維持する方法について解説しました。
ローンが残っていない自動車であれば、比較的容易に手元に残せますが、これに対して、ローンが残っている自動車を維持するには、ハードルをもう一つ超える必要があります。
破産をすると、ローン会社が自動車を持っていく
自動車ローンを組む際、あまり気にされる人はいないでしょうが、通常、『所有権留保』という特約がついています。
所有権留保というのは、ローンの支払いを終えるまでの間、その自動車の所有権を渡さない、というものです。
つまり、自動車をローンで購入した場合には、購入者の手元に自動車がきても、実はまだ自分のものになっていないのです。
ローンを完済して初めて所有権が購入者にうつるのです。
そうすると、ローンを完済していない状態で破産をすると、ローン会社の人は
「ローンを返せないんだったら、自動車を返してください。まだ所有権はこっちにありますから」
というわけです。
ローンが残っている自動車を維持する場合には、このハードルを越える必要があるのです。
ちなみに、自動車ローンだけ外して破産をするということはできませんのでご注意を。
方法の1:完済してしまう
考えられる方法の1つ目は、完済してしまうことです。
ローンを完済してしまえば、所有権者は移るので、当然、自動車もひきあげられません。
ただし、ここで注意が必要なのは、破産をする人の財産で完済してはいけない、ということです。
破産をする人の財産は、法律の手続にのっとって、公平に分配されるものです。
誰かにだけ優先して返済してはいけません。
このようなことをしてしまうと、偏頗弁済(へんぱべんさい)といわれ、後々に問題になる可能性があります。
ローンを完済する場合には、第三者弁済で
そこで、ローンを完済してから破産をすることを希望する場合には、破産者以外の第三者(通常は親族でしょうね)がお金を出して完済するのが通常です。
「お金を出したのが第三者でも、ローン会社だけ優先的に弁済してるのって不公平じゃない?」
と、思われる方もいるでしょう。
しかしながら、偏頗弁済が問題になるのは、あくまでも債権者間の平等を害するためです。
たとえば、100万円の財産を持っているAさんが破産をしたとします。
これに対してAさんの債権者(お金を払って、という権利を持っている人)が
・Xさん:500万円
・Yさん:400万円
・Zさん:100万円
だとすると、Aさんの100万円は
・Xさん:50万円
・Yさん:40万円
・Zさん:10万円
と分配されます(実際には優先順位があるのでもっと複雑ですが)。
それにもかかわらず、AさんがZさんに対して、100万円を弁済してしまうと、XさんとYさんは1円ももらえないことになってしまいます。
これでは、不公平ですし、XさんとYさんの権利が侵害されています。
これに対して、第三者であるBさんが自分の財産でCさんに対して100万円分支払っても、Aさんの100万円は
・Xさん:55万5556円
・Yさん:44万4444円
と分配されますので、本来の取り分よりも多くもらえますので、権利が侵害されているとはいえません。
たしかに、Zさんだけ全額の弁済を受けられているので不公平に見えますが、XさんとYさんが配当されると期待して良いのは、あくまでもAさんの財産だけです。
破産をする人以外の財産から弁済されることを期待するのは間違っています。
第三者にお願いする際には、破産をすることを伝えること
このようにして第三者弁済をした場合は、第三者から破産者に対して求償権が生じると考えられます。
求償権ってなに? と思われる方のために解説すると、
こういった自動車ローンに関しては、本来、借りた人本人が払うべきものです。
第三者が代わりに払ったような場合でもそれは変わりません。
そこで、第三者が借りた本人の代わりにローンを支払った場合は、いわば支払いをした分の権利が移るのです。
そうすると、第三者にローンの支払いをお願いすると、第三者としては、支払いをした分は、最終的には本人に請求できると考えるでしょう。
しかしながら、第三者からの求償権も、最終的には破産で消えてしまいます。
すると、破産をすることを黙って第三者にローンの支払いをお願いすると詐欺となる可能性があります。
そこで、第三者にお願いをする際には、自分は破産をしてしまうので、求償権が発生してもそれは免除されてしまうということはあらかじめ告げるべきです。
今回はこの程度にして、次回は、第三者にローンの完済まではお願いできない場合について解説していきます。
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