破産と離婚の解説第4回。今回は、養育費を受け取る側が破産をする場合について解説していきます。
養育費も財産です
養育費というと、何か特別なイメージがあるように思われるでしょうが、これもあくまで財産です。
破産をすると、原則として、財産はすべてとられてしまうことになります。
したがって、理論上は、養育費も破産によって失うのが原則となります。
将来の養育費は問題なし
養育費が財産といっても、さすがに、これからもらう養育費までは破産をしてもとられません(正確には、破産手続開始決定後に受領する養育費)。
ですので、破産をすると、今後、養育費をもらえなくなる、ということはありませんのでご安心を(養育費は日々発生するものだからです)。
未払いの養育費は破産財団を構成する
しかしながら、未払いの養育費については、破産をすると、とられてしまうのが原則です(養育費請求権は差押禁止債権ではないからです)。
理論上は、破産管財人が養育費の支払義務者に対して、未払いの養育費を支払うよう求めることが可能になります(破産管財人が回収した養育費は、破産者の手元にはきません。破産財団となり、破産管財人の報酬や各債権者への配当に回されます)。
もっとも、以前解説したように、自由財産拡張という制度があります。
養育費は、たしかに、差押禁止財産ではないので、本来的自由財産とはなりません。
しかし、自由財産拡張という制度を使えば、未払いの養育費でも、破産者の手元に残せる可能性が高いでしょう(通常の範囲の養育費であれば、差押禁止債権の範囲の変更(民事執行法153条)による差押禁止が認められると考えられるからです(全国倒産処理弁護士ネットワーク編『破産実務Q&A200問』・平成24年12月15日・株式会社きんざい・100頁参照))。
既に受け取った養育費は取られてしまう
これに対して、たとえ養育費であっても、既に受け取ってしまい、現金や預金になってしまったものは、原則としてとられてしまうでしょう。
未払いの養育費であれば、まだ養育費としての性格を残しています(そのため、自由財産拡張を使いやすいです)。
しかしながら、もともとは養育費であっても、これを受け取ってしまったら、法律上、もはや養育費ではなくただの現金や預金になってしまいます。
もちろん、現金や預金であっても、自由財産拡張により、手元にある程度までであれば手元に残すことが可能でしょう。自由財産拡張にあたって、もともとが養育費であるということも考慮されるでしょうが、未払いの養育費と比べると、残せる範囲もおのずと少なくなるでしょう。
したがって、たとえば養育費を受け取る側が、養育費の一括払いを受けた後に破産をするとなると、受け取ってしまった養育費をとられてしまうおそれがあるので、注意が必要です。
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