会社を興す前から、失敗した場合の話をすることは縁起が悪いかもしれませんが、起業はノーリスクではありません。
リスクを内在している以上、そのリスクが顕在化してしまった場合のことも考慮しておくべきでしょう。
「破産? そんなもの、弁護士の仕事だろ。刀折れ、矢尽きた時点で弁護士に相談すれば十分だろ」
そう思われる方もいるでしょうし、もっともな考え方ではあります。
ただ、世の中には「破産すらできない企業」が一定数あることをご存知でしょうか?
こうなってしまっては、いったん借金を全部きれいにしてしまってから、再スタートをきるということができなくなります。
破産の知識を抑えておくというのは、万が一、起業に失敗したときに、円滑な再スタートをきるために必要なことです。
今回から、私の経験上、経営者が知っておくと便利な破産の知識をあげていきます。
1.破産をするにもお金がかかる
破産はタダではできません。
「金がないから破産をしたいってのに、金がないから破産できないってのはどういうことだ!」
と言いたくなるお気持ちは良く分かります。
でも、破産をする際には、たくさんの人が様々な仕事をします。そういった人たちの報酬を国が全部負担するかというと、そんなことはしてくれません。
裁判所の人件費等は全部国がもってくれるのですが、それ以外の部分(破産管財人の報酬や弁護士費用など)は国が支払ってくれないのです。
国庫から支払わない、という政策決定をされてしまっている以上は、これはどうしようもありません(不満があれば、法を変えていただくしかありません)。
破産に必要な費用と集め方
じゃあ、具体的にいくら必要かというと、なかなかに難しいところがあります。
ケースバイケースとしかいえません。企業規模や依頼する弁護士、破産する地域によって変わってきますが、最低100万円(法人資産で)は確保しておくべきでしょう(企業規模が多くなれば、もちろん、もっと大きな金額が必要になります)。
このように解説すると、
「金がないのに、100万円も確保するのはムリだ!」
と思われるでしょう。
それはごもっともです。
ただ、ここで用意しろといっているお金は、なにも、借金や従業員の給料を支払った上で残しておくお金ではありません。
あくまでも、現時点で、税金も、借金も、買掛金も、従業員への給料さえ支払いを止めてしまったと仮定して、確保できるお金です。
簡単にいうと、払うもんは払わずに、とにかく用意できるお金です。
現金や預金がなければ、解約返戻金のある保険や、回収が確実でかつ支払期限が間近な売掛金も計算にいれてしまって構わないでしょう。
こういったものをかき集めて、破産の費用にあてることになります。
こういうことはやってはダメ
以下、想定されるケースを解説していきます。
やはり、ありうるケースとしては、私的な配当を行った後に、破産を弁護士に依頼するケースでしょう。
「残った現金やらなんやら、全部かき集めて返済できるだけのことはやってきましたわ。世話になったとこには全部返してきたから、金は1円もないけど後は頼んます」
とまぁ、このような感じでお願いされても、どうにもできなくなってしまいます。冒頭にも説明しましたが、お金がないと破産もできないのです。
また、配当は、法が定めた優先順位に沿って行われます。勝手に優先順位をつけて返済するのは、偏頗弁済になることがありますのでご注意を。
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