コメント欄で、退職を検討されている方からのご相談をいただきましたので、以下では、私が考える、早期に法律事務所を退職してしまった方が再就職するための道について記述していきます。
ちなみに、ノキ弁や早期独立といったルートもありますが、ここでは、ご相談の趣旨と思われる再就職を中心に記述していきます。
また、ご相談の趣旨に沿って、最初の就職先がブラック事務所であることを前提に記述していますのでご注意を。
1.望ましいルート
現在の就業先にいたまま、ある程度自由に活動できるなら、就業中に就職活動をするのが良いです。
収入が途絶えてしまうと、精神的にも経済的にも追い詰められてしまう可能性があるので、せめて経済的な余裕だけは保ったまま、就職活動をされるのが望ましいです。
ただ、なかなかそういった時間的余裕のある事務所というのは少ないですからね。
以下、私の考えを述べていきます。
2.法律事務所への再就職を希望する場合
(1) 公募ルート
結論としては、早期退職したことをそれほど気にする必要はないのではないでしょうか。
ア 採用する側の理解
就職してから1~3ヶ月程度で退職する弁護士は意外に多いものです。
ボス弁と反りがあわないと、その事務所にいるのはかなりしんどいですからね。
新人を採用しよう、という弁護士は、弁護士経験年数も長めの方が多いでしょう。そういった中で、どこそこの事務所の新人がやめた、だとかいう話はよく耳に入ってくるでしょうから、早期退職者を色眼鏡で見るということは、あまりないのではないでしょうか(簡単にいえば、見慣れているため)。
このように、採用する側に理解があるものと思われます。
ただ、そうはいっても、就職活動となると、ライバルの存在なども気になるところでしょう。しかしながら、ねらい目の事務所というのもあるのではないでしょうか。
イ ねらい目の事務所
ねらい目の(と私が考える)事務所は、
「67期が弁護士登録するまで待てない事務所」
です。
弁護士を募集する事務所はいろいろありますが、業務多忙やイソ弁の独立が決まってしまって、早期に人手を増やしたい、67期が登録するまで待てない、という事務所も多いです。
目安の一つ目は、弁護士や66期修習生は募集しているものの、67期修習生は募集していない事務所です。
これは、応募条件から推測できますね。
もう一つは、募集理由に「業務多忙のため」などと書かれている事務所、もしくはそれをにおわせる事務所です。
業務多忙の事務所としては、できるだけ早期に人手がほしいものです。
こういった事務所では、「早く働ける」ということはそれだけで魅力的に映ります。「67期を待つのも手だけど、67期が事務所に入るのは12月以降かぁ」と考えると、早期退職というマイナスポイントを相殺して余りあるほどの魅力になるでしょう。
ウ ライバルについて
事務所をわずか数ヶ月で退職してしまった自分が果たして就職できるのか、と悩む原因の一つは、ライバルの存在でしょう。
でも、ライバルについては、そんなに思い悩む必要はないでしょう。
ライバルの一つは同期です。
ただ、同期のライバルは五十歩百歩です。いま、就職活動をする同期というと、
・同じように早期に退職した同期
・修習が終わっても残念ながら就職が決まらなかった同期
しかいません。
脅威となるかというと、数の面では脅威になり得ますが、質の面では脅威になりえないでしょう。
もう一つのライバルは、67期です。
「それほど忙しくはないけど、就職難でかわいそうだし、そろそろ修習生でも雇ってやるか」という余裕しゃくしゃくの事務所に就職しようとすると、かなり強力なライバルになります。
これに対して、業務多忙等のため、できるだけ早期に人手が欲しいという事務所に応募する際には、「今すぐ働ける」というのはアドバンテージになりますので、早期退職というマイナスを打ち消してくれるでしょう。
エ 募集する事務所はある
先ほど述べたように、就職して1~3ヶ月ほどで退職してしまう弁護士は意外と多いものです。
そうすると、新人を採用した事務所としては予定が狂ってしまいますので、再度募集をかけるでしょう。
そのため、今後も求人は絶えないでしょう。
(2) 公募以外のルート
公募以外のルートも重要です。
こういったことを書くと、当事者から怒られるかもしれませんが、まずは、「教官」や「弁護修習先の指導担当弁護士」に相談すると良いでしょう。
仮に、就職活動をしていた当時、「教官」や「指導担当弁護士」が力になってくれなかったとしても、今なら力になってくれるかもしれません。
「教官」は多数の教え子を抱えています。そのほぼ全員が就職活動をしているので、修習中は、全員の就職の面倒をみてあげることはできません。これに対して、教え子の就職がひと段落した今であれば、ある程度手があいているでしょうから、力になってくれるかもしれません。
「指導担当弁護士」は、修習中は、「まぁ、こっちが手を出さなくても何とかなるだろ。なんだかんだ言っても、修習もあと●か月あるし」と思っていたのかもしれません。それに対して、今の段階で退職してしまった(もしくは退職してしまう)ということがわかれば、こちらが抱えている危機感を理解して、力になってくれる可能性があります。
ほか、ロースクール時代の教員や大学のゼミの先生など、人脈がありそうな方にも相談すると良いでしょう。
3.企業内弁護士というルート
企業内弁護士というのも一つの選択です。
企業は、弁護士の就職状況というものにくわしくありません。
そのため、就職して1~3か月ほどでやめてしまう、ということについてマイナスに見られるかもしれません。
ただ、弁護士を採用しよう、という企業はある程度コンプライアンス意識が高いと思われます。
こういったコンプライアンスの意識が高い企業にとって、ブラック事務所というのは驚くべきものではないでしょうか。
たとえば、1日16時間労働、土日なしで残業代も支払われず、ボスからはパワハラを受けるという状況を説明すれば、やめた理由(というよりやめざるを得ない理由)を理解してくれるのではないでしょうか。
4.弁護士としてではなく、企業に就職するルート
最近流行り(?)の法曹有資格者っぽいルートです。
企業内弁護士を募集していない企業にとっても、自分の企業の中に弁護士がいる(もしくは登録さえすれば弁護士になれる人がいる)、というのはかなり心強いものです。
一般社員として入社しても、司法試験に受かっているということであれば、様々な法的な相談をされるでしょうから、企業内弁護士に近い仕事ができる可能性が高いのではないでしょうか。
また、競争力(就職する際の競争力)という観点からも有利でしょう。
たいていの弁護士は、企業内弁護士を募集している企業にしか応募しません。
それ以外の企業には応募しません。
そうすると、人材募集をしている企業としては、弁護士が応募してくるというだけで、かなりビックリするのではないでしょうか(悪い意味ではなく)。
かなり高い確率で興味をもってくれるでしょうし、好意的な目で見てくれるでしょう。
しかも、企業内での実際の営業活動に精通している弁護士というのは非常に稀少な存在です。
社長や重役と良い関係を築いておけば、独立後は顧問先になってくれる可能性もありますし、
「うちには、ちゃんと現場のことがわかっている顧問弁護士がいてね」
と話題にしてくれることで、その業界内での評判も広がっていくことが期待できます(そして、顧問先の獲得へ)。
理想論ばかりではありますが、個人的に、これはけっこうおすすめのルートです。珍しい、ほとんどだれも歩んでいない道というのは、使い方次第で、かなり大きなアドバンテージになります。
以上が、私が考える、早期退職してしまった場合に再就職するルートです。
みなさんの参考になれば幸いです。
5.(追記)お体にお気をつけて
ブラック事務所に就職してしまった方は体の異変に注意されてください。
突然、心臓が痛くなるなど体に異変を感じて、病院に行ったが、「異常なし」と診断されたら注意が必要です。精神的なものからきている可能性があります(私は医師ではないので、不正確かもしれませんが)。
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