交通事故の被害は、時として深刻な後遺症をもたらします。
後遺障害の深刻さによっては、普通に家で生活することすら困難になることがあります。
このような場合には、家のバリアフリー化やホームエレベーターを設置するなど、家の改装が必要になるでしょう。
こういった家屋の改造費についての解説です。
改造費が認められる要件
当然ながら、ありとあらゆる後遺症でリフォーム費用が認められるわけではありません。
リフォームをするだけの必要性がなくてはいけません。
(1)受傷の内容
(2)後遺症の程度・内容
(3)(1)と(2)を具体的に検討し、必要性が認められる場合にのみ賠償されます。
改造内容の例
後遺症に応じて、必要なリフォームは変わってきますが、具体的には以下のような改装が考えれます。
・段差の解消やスロープの設置
・ホームエレベーターの設置
・エレベーターの管理費用
・水平トランスファーシステムの設置
・階段昇降機の設置
・浴室やトイレの拡張費用
・玄関にリフトを設置
・建物が古くて改装ができない場合には、新築した際の障害者用の設備の設置費用
全額認められないこともあるのでご注意
このような改装費用が全額認められることもあります。
たとえば、水平トランスファーシステムは後遺症を負った被害者以外に恩恵を受ける方がいるのはまれでしょう。
しかしながら、エレベーターを設置したり、家を増築したりした場合には、事故の被害者だけでなく、その家族も恩恵を受けることになるでしょう。
裁判所は、このようなことを考慮して、事案に応じて改装費用の一部を制限することがあります。
改装が必要か否かという問題もありますので、すぐに改装するのでなく、弁護士などの専門家に相談してから着手しないと、思わぬ損失を被ることがありますので注意してください。
裁判例のご紹介
後遺障害の等級が2級以上であれば、後遺症の内容もかなり重いので、改装費も認められやすくなるといえます。
・第五頚椎以下完全麻痺等で1級3号が認定されたケース。水平トランスファーシステムは全額、ホームエレベーターは他の家族の利便性につながるとして、8割に制限された事例(大阪地判平成10年6月29日・交通民集31巻3号929ページ)
・頸髄損傷による四肢の完全麻痺等で1級3号が認定されたケース。車椅子用の階段昇降機の設置費が認められた事例(東京地判平成11年7月29日・交通民集32巻4号1227ページ)
・頸髄損傷で1級3号が認められたケース。エレベーターや浴室のバリアフリー化、玄関のリフト設置などの費用が認められ、しかも、他の家族の利便性の向上は単なる反射的利益に過ぎないとした事例(東京地裁八王子支部判平成12年11月28日・自動車保険ジャーナル1388号1ページ)
これに対し、3級以下となると、そもそも家屋の改造までは必要ないケースも多いです。
しかしながら、ケースバイケースで判断するしかありませんが、必要性さえ認められれば裁判所は家屋の改造費を認めます。
いくつかの裁判例を紹介します。
・左股関節痛で12級12号が認定されたケース。家屋改造費用約519万円のうち、約425万円が認められた事例(東京地判平成12年3月8日・自動車保険ジャーナル1359号3ページ)
・右下肢のRSDで9級が認定されたケース。日常生活が車椅子になったため、段差解消工事、手すりの取付工事、ガレージの工事費用などを認めた事例(大阪高判平成18年8月30日・自動車保険ジャーナル1657号2ページ)
・1上肢の用を全廃したとして5級6号が認定されたケース。トイレや風呂の改造費が認められた事例(仙台地判平成22年5月18日・自動車保険ジャーナル1837号75ページ)
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