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自動車の改造費用(購入費も含め)~交通事故の被害者のために~

 今回から、サブタイトルを少し変更しました。「被害にあった方」だと長いので、短くしただけです。時間があるときにでも、今までの投稿分も随時変えていきます。

 さて、今回は、自動車の改造費用について解説していきます。
 市販の自動車は、基本的に健常者が運転しやすいように作られています。
 そのため、後遺障害の内容によっては、自動車を改造しないと運転ができなくなることがあります。
 また、重篤な後遺症が残った場合には、自動車を介護用に改造する必要があります。
 こういった自動車の改造費用やはたまた購入費まで認められるのでしょうか?

自動車の改造費用が認められる要件

 基本的には、家屋の改造費用の場合と同じです。

(1)受傷の内容
(2)後遺症の程度・内容
(3)(1)と(2)を具体的に検討し、必要性が認められる場合に賠償されます。

賠償される金額

 障害の内容に応じて相当な改造費用が認められます。
 また、自動車は一度購入すれば一生使えるというものではありません。
 そのため、義手や義足の損害賠償の項目でも説明したように、将来の買替費用も請求可能になります。
 交換年数は、6年~10年とする裁判例が多いようです(つまり、6年ないし10年ごとに買い替えることを前提とした損害賠償請求ができます)
 いつまで認められるかという点については、介護車両へ改造する費用については、平均余命まで、被害者が運転することを前提とする改造については、就労可能期間(働くことができるであろう期間)まで認める裁判例が多いように思われます。

裁判例の紹介

 以下では、いくつかの裁判例をご紹介していきます。

・四肢完全麻痺、膀胱直腸障害等で1級3号が認定されたケース。自動車の改造費用が、余命期間まで、8年ごとの交換を前提として認められた事例(東京地判平成11年7月29日・交通民集32巻4号1227ページ)

・躯幹失調、四肢不完全麻痺等で1級3号が認定されたケース。車椅子に乗ったまま乗車できる福祉車両の購入費と一般車両の購入費用の差額を、6年ごとの交換を前提に認められた事例(東京地判平成16年12月21日・交通民集37巻6号1721ページ)

・右腕神経叢損傷等により45%の労働能力喪失率が認定されたケース。自動車のハンドルにリモコン付きステアリンググリップを装着する費用を6年後との交換を前提に認めた事例(大阪地判平成20年12月24日・交通民集41巻6号1664ページ)

・右腓骨神経麻痺による右足間接の機能障害で10級11号が、右足代1及び第2指の機能障害で11級10号が、右手関節機能の障害で12級6号が認定され、併合8級が認定されたケース。右足で的確にペダル操作をすることが困難なため、左足ペダルの取付費用を、『余命期間』まで、6年後との交換を前提に認めた事例(大阪地判平成21年2月16日・判例タイムズ1289号65ページ)

自動車の『購入』費用も認めた裁判例

 基本的には自動車を改造するために必要な費用しか認められませんが、自動車の購入費も認められた事例があるのでご紹介します。

・第4胸髄以下完全麻痺、知覚脱失、高次脳機能障害等で別表1の1級1号が認定されたケース。被害者がこれまで自動車を購入したことも、自動車を購入する計画もなかったことから、将来、自動車を購入する蓋然性は高くはないと認定し、改造自動車の購入費用全額を、6年後との買替えを前提として認めた事例(東京地判平成21年10月2日・自動車保険ジャーナル1816号35ページ)

 この裁判例が認定したように、『被害者がこれまで自動車を購入したことも、自動車を購入する計画もなかった』という場合には、本来、自動車を購入する必要がなかったが、交通事故によって自動車の購入をも強いられることになったといえますので、自動車の購入費用も認められる可能性が高くなるといえますね。

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