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入院付添費は認められるか~交通事故の被害にあった方のために~

 交通事故の被害は時として重篤な症状をもたらします。
 それによって入院せざるを得ないこともあるでしょう。
 交通事故の被害者が入院した場合、家族は心配して駆けつけるでしょうが、場合によっては仕事を休んで付き添う方もいるでしょう。
 それでは、このような付添費用に対して、何らかの補償はされるのでしょうか。

入院付添費は当然には認められない

 家族が心配な気持ちはわかりますが、だからといって、このような入院付添費は、当然に認められるものではありません。
 裁判所は、主に、それが治療に必要なのか、交通事故による損害の回復のために必要なものか、という観点から判断します。
 家族を想う気持ちは尊いものですが、当然に、入院付添費は認められません。

例外1:医師の指示があった場合

 医師が付添看護が必要だと判断すれば認められます。
 その場合には、医師の指示があったことを証明するために、医師に、付添看護が必要だという証明書(付添必要証明書)に一筆もらう必要があるでしょう。
 ただ、完全看護体制(基準看護)の病院では、通常、こういった証明書を書いてくれないでしょう。
 なぜなら、この完全看護というのは、患者の家族などの付添人が必要ない体制を意味するからです。
 必要のない付添いを、医師は指示しないでしょう。
 ただ、医師や病院が悪いというより、これは、厚生労働省のほうで指示しているのです(保険医療機関における看護は、当該保険医療機関の看護要員によってのみ行われるものであり、患者の負担による付添看護が行われてはならないとされています(「基本診療等の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」平成22年3月5日保医発0305第2号))。

例外2:ケガの程度、被害者の年齢等により必要がある場合

 しかしながら、基準看護では、患者による付添いは必要ない、というのは、建前としか思えないでしょう(もっとも、そういった建前が重視され、建前を破るとペナルティを受けるのが日本社会です)。
 実際の現場では、症状によっては、看護師による看護だけでなく、家族などによる付添いが必要な場合があるでしょう。
 裁判所はその点を実質的に判断します。
 いくら厚生労働省が必要ない、と言っていても、裁判所は建前は重視しません。実際に必要であれば付添看護費を認めてくれます。

 では、どういった場合に認められるのか。
 まずは、さきほどの厚生労働省の通知が目安となります。
 さきほど紹介した通知には、実は、ただしがきがあります。
 「ただし、患者の病状により、又は治療に対する理解が困難な小児患者又は知的障害を有する患者の場合は、医師の許可を得て家族等患者の負担によらない者が付き添うことは差し支えない。」
 というのです。
 治療に対する理解が困難な小児患者又は知的障害を有する患者の場合には、付添看護の必要が認められる可能性があるといえますし、むしろ、このような場合には、医師に証明書を書いてもらうようにすると良いでしょう。

 このほか、障害のため日常生活の全てにわたって介護を必要とする場合や意識障害があった場合にも認められるでしょう。
 ただ、ここで重要なのは、裁判所はあくまでも看護師による看護をこえて、付添看護が必要だったかどうかを判断します。
 必要ないけど心配だから付き添った、という状況では、残念ながら認められないでしょうから注意してください。

いくらもらえるのか

 近親者の付き添いの場合には、1日6500円程度とされています。
 付き添っていた人が、仕事がある人で、仕事を休んで看護をしていたという場合は、休業損害と6500円程度とを比較していずれか高いほうとなるでしょう。
 ただし、いずれか高いほうといっても、あまり高額な場合は認められません。高額な休業損害を発生させるくらいなら、誰かを雇って付き添わせたほうが合理的、と裁判所は判断するからです。

 次回は、ちょっと短めですが、通院付添費の問題について解説していきます。

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