破産のデメリット。
第5回は、破産者名簿について解説していきます。
破産をすると、本籍地の市町村が管理している破産者名簿というものに登録されることがあります。
破産者名簿に登録される流れ
破産者名簿に登録されるのは、以下の流れが想定されていると思われます。
破産手続開始決定が確定する→裁判所書記官が本籍地に通知する→通知を受けた役所の人が破産者名簿に記載する
平成17年の破産法改正前はこのような運用がなされていたようです。
しかし、改正後は、この破産者名簿に登載されることはほとんどなくなったようです。
破産をしても破産者名簿にのらないことが!?
というのも、「戸籍事務司掌者に対する破産手続開始決定確定等の通知」というのがありまして、これによると、裁判所書記官が市町村に通知する場合が非常に限定されることになります。
裁判所書記官が市町村に通知をするのは、以下のような場合です。
1.破産手続開始の決定が確定した日以後1月を経過した時点において、当該破産手続にかかる免責手続が係属していないとき
2.破産手続開始の決定が確定した日以後1月を経過した後に,当該破産手続に係る免責許可の申立てがすべて取り下げられたとき
3.破産手続開始の決定が確定した日以後1月を経過した後に、当該破産手続に係る免責許可の申立てのすべてについて、これを却下し、又は棄却する裁判が確定したとき
4.破産者について、免責不許可の決定が確定したとき
5.破産者について、免責取消しの決定が確定したとき
何を書いてあるのかよくわからないとは思いますが、ここにあげられているようなケースは非常にマレなケースです。
ほとんどのケースでは、このようなケースに該当しません。
そうすると、ほとんどのケースでは、裁判所書記官が役所に通知をしないので、破産者名簿にも記載されない、ということになると思われまます。
要は、
(1)破産をする
(2)裁判所書記官が市町村に通知する
(3)市町村が破産者名簿に登載する
という流れのうち、(2)が欠けるので、(3)も行われないということになります。
※なお、理論上は、市町村の担当者が官報公告を見て、破産者名簿に登載するということは考えられなくはないです。しかし、官報には本籍地がのらないので、このような運用は非常に手間がかかります。そのため、このような運用をされている市町村は存在しないのではないでしょうか。
破産者名簿にのると、どんなデメリットがあるの?
とはいえ、破産者名簿に登載されるリスクはゼロとまではいえません。
そこで、破産者名簿にのってしまった場合のデメリットを検討していきましょう。
身分証明書を取得できない
身分証明書というと、免許証や保険証を思い浮かべる方が多いでしょう。
え!? 身分証明書がないと生活できないよ! と思われるでしょうが、ご安心ください。その身分証明書ではありません。
ここでいう身分証明書とは、本籍地の市町村が発行してくれる「破産の通知は受けていませんよ」という証明書です。
免許証や保険証のような、日常生活で使う身分証明書は関係ありません。
また、この『身分証明書』を提出することって、日常生活ではほとんどないでしょう。
弁護士のような制限職種につく場合は、破産中でないことが要件なので、『身分証明書』提出を求められますが、その程度ではないでしょうか。
第三者がみることはできません
破産者名簿は非公開です。
そのため、ふらっと役所に行って、「破産者名簿見せてください」なんて言っても見せてくれません。
破産者名簿に載ってしまうことによって、誰かに破産の事実が知られてしまうというのは、通常、考え難いでしょう(もっとも、官報は誰でもみることができます)。
以上が破産者名簿の解説となります。
このように、破産者名簿への登載可能性はデメリットとはいえますが、それほど大きなデメリットとはいえないでしょう。
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