自己破産をされる方の中には、長期間、貸金業者と取引をされている方もいます。
中には、過払金が発生していて、お金を取り戻せる業者がいることもあります。
今回は、過払金と自由財産の関係について説明していきます。
過払金は自由財産拡張の対象になるか
過払金は、現金でも差押禁止財産でもありません。
そのため、本来的自由財産(破産法34条3項)にはあたらないので、法律上、当然に維持できることにはなりません。
過払金は原則として、処分されてしまう財産になるので、過払金を手元に残してもらうためには、自由財産拡張(破産法34条4項)が認められなくてはいけません。
過払金が拡張適格財産となるための条件
過払金が自由財産拡張の対象になるかというと、明確な基準を設けているのは、大阪地裁と仙台地裁のみ(全国倒産処理弁護士ネットワーク編『破産実務Q&A200問』・平成24年12月15日・株式会社きんざい・62頁)だそうです。
大阪地裁では、過払金は、当然に自由財産として拡張されるものではなく、以下のような基準を用いているようです(野村剛司・石川貴康・新宅正人『破産管財実践マニュアル〔第2版〕』2013年7月3日・青林書院・297頁参照)。
1.回収済みの過払金
拡張対象となる
2.未回収の過払金
原則として、拡張対象とはならないが、
(1)過払金の返還額及び(2)過払金の返還時期について合意ができている場合には、拡張対象となる(確定判決がある場合を含む)。
過払金を弁護士費用にあてることは許される
過払金はあくまでも権利です(正確には、不当利得返還請求権といいます)。
過払金を回収すると、現金になります。
そうすると、破産申立直前に過払金を回収すると、以前解説した直前の現金化の問題が生じます。
たとえば、過払金を100万円回収して、うち50万円を使ったとします。
すると、自由財産拡張をする際には、
×残った過払金は、50万円とカウントするのではなく、
○費消する前の100万円としてカウントすることとなります。
しかし、回収した過払金は、『有用の資』にあてることは許されています。
『有用の資』の具体例としては、弁護士費用や予納金があげられます。
たとえば、過払金を100万円回収して、うち30万円を弁護士費用、20万円を予納金にあてたとします。
このケースですと、50万円を費消していますが、使途は『有用の資』ですので、自由財産拡張をする際には、
○50万円の過払金としてカウントされることとなります。
50万円とカウントされることのメリット
このように、過払金が『有用の資』に充てられた分、少なくカウントされることに何のメリットがあるのか、疑問に思われる方もいるでしょう。
実は、自由財産拡張の際に有利になるのです。
自由財産拡張の際には、全国的に、総額99万円基準を採用している裁判所が多いと以前解説しました。
これはつまり、総額で99万円までの財産を残せるいうものです。
そうすると、手持ちの財産で99万円の枠を取り合うことになるので、過払金が50万円とカウントされるか、100万円とカウントされるかで他の財産を残せるかについて、大きな違いが生じてくるのです。
50万円とカウントされれば、残り49万円の枠が残ることになります。
これに対し、100万円とカウントされてしまうと、枠を全部使い切るどころか1万円オーバーしてしまいます。この場合には、99万円の枠を全部過払金に使ったとしても、50万円全額を維持することはできません。維持できる過払金は、49万円だけとなります。
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