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物損について、慰謝料は認められるか~交通事故の被害者のために~

 今回は、物損の慰謝料について解説していきます。
 交通事故の被害にあって、人がケガをしたり、後遺症が残ったり、死亡した場合には慰謝料を請求できます。
 しかしながら、交通事故の被害は何も人身被害だけではありません。
 大切にしていた物が壊れることもあるでしょうし、ペットの散歩中に被害にあったような場合には、ペットの命が失われることがあります。
 こういった『物』に関して、慰謝料は認められるのでしょうか。
 (なお、民法では、『人』以外は『物』として扱われます。生物でもそうですが、これは法律が生命を軽視しているのではなく、単に便宜上のものです)

物損に関する慰謝料は原則認められない

 残念ながら、結論から先行して言うと、物損の慰謝料は原則、認められません。
 とくに、自動車の場合には、どんなに大切にしていた自動車でも、よほどの事情がない限りは認められないでしょう。
 判例(東京地判平成元年3月24日・交通民集22巻2号420ページ)も、物損の慰謝料を請求するためには、被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害するような特段の事情が存在することが必要である、としています。

ペットの慰謝料は認められやすい

 ただ、交通事故の被害にあってペットが死亡したような場合は、慰謝料は比較的認められやすいといえるでしょう。
 ペットは飼い主のパートナーです。
 家族同然に飼っている方もすくなくないでしょう。
 ペットは失った悲しみは、たとえばペットの葬儀費用をもらっただけで慰謝されることはそれほど多くはないでしょう。
 たとえば、判例(東京高判平成16年2月26日・交通民集37巻1号1ページ)は、ペットの犬が死亡した事例について、長い間家族同然に飼ってきたことを理由として、慰謝料5万円を認めています。
 また、死亡までしなくても、8歳のラブラドールレトリバーが第二腰椎圧迫骨折により、後肢まひ、排尿障害が残ったケース(名古屋高判平成20年9月30日・交通民集41巻5号1186ページ)では、飼い主夫婦に対して合計40万円の慰謝料が認められました。

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