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温泉治療費は認められるか~交通事故の被害にあった方のために~

 交通事故の被害にあい、むち打ち、頚椎捻挫(頸椎捻挫)、外傷性頭部症候群(外傷性頚部症候群)、腰椎捻挫などになられた方の中には、温泉療法を試みられる方がいます。
 温泉療法は、温泉の成分に含まれる化学物質(二酸化炭素や硫黄など)が体内に作用することにより、症状の改善を促すものです。
 とくに、医師による治療では、なかなか改善が見られない場合は、一縷の望みを託し、温泉療法を試みられる方もいます。
 ただ、湯治に行く前にちょっと待ってください。費用は、当然、加害者が負担してくれると思っていては危険です。

温泉治療費は原則認められない

 残念ながら温泉治療費は原則として、加害者に払ってもらえません。
 つまり、自己負担となるのが原則です。
 整骨院・接骨院での治療費が原則として支払ってもらえないように、温泉療養費についても、裁判者は厳しく判断します。

例外的に、医師の指示等がある場合は認められることも

 ただ、整骨院・接骨院の項目でも解説したように、原則には例外があります。
 医師が治療の一環として、温泉療法を指示したような場合には、例外的に認められます。
 たとえば、医師が温泉療養を勧めた事例(東京地判昭和53年3月16日・判例時報900号79ページ)では、温泉療養費が損害として認められています。

認められても、金額は制限される傾向

 しかしながら、温泉療法に対し、裁判所は接骨院・整骨院よりも厳しく判断する傾向にあります。
 認めるといっても、全額を損害として認めることはなかなかありません。
 さきほど紹介した裁判例(東京地判昭和53年3月16日・判例時報900号79ページ)でも、認められたのは60%でした。

まとめ

 このように、温泉療法は、医師の指示などがあった場合に例外的に認められるが、その金額は制限される傾向にあります。
 また、自分の判断で温泉療法を行うことは危険を伴います。
 温泉療法は、単に体を温めるものではありません。
 温泉に含まれる化学物質を体内に作用させるものです。
 そのため、誤った療養方法をとれば、むしろ症状を悪化させるおそれすらあります。
 温泉療法(湯治)をする場合には、自分の体のためにも、きちんと、主治医や専門医の指示のもと、適切に行いましょう。

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