自動車(交通事故における被害車両)は、修理すれば完全に元通りというものではありません。
車の外観や機能に欠陥が生じることがあるでしょう。
また、こういった事故歴・修理歴があると、事故車(修理車)として扱われることになるので、価値が下がってしまうでしょう。
これを評価損・格落ちといいます。
評価損は、全損の場合には請求できない
評価損とは、修理歴によって価値が下がったことによる損害です。
あくまでも『修理』が前提ですので、全損の場合には、評価損は請求できないので注意してください。
評価損は100%認められるものではない
評価損は、どんな事故の場合でも100%認められるというものではありません。
裁判例を見る限り、これを否定した裁判例もあります。
また、文献(北河隆之『交通事故損害賠償法』平成23年4月15日・弘文堂・291ページ)も「特に事故歴による商品価値の下落については,評価損を認めるべきかどうか争いがある」としています。
裁判例の大勢は認める傾向にある
100%認められるものではないといっても、実は、裁判例を分析すると評価損については認める傾向にあります。
裁判例を詳細に分析した文献(海道野守『裁判例、学説にみる交通事故 物的損害 評価損 第2集‐3』平成14年6月10日・保険毎日新聞社(以下、『評価損』といいます)・15ページ)によると、「評価損を認める裁判例が、全評価損裁判例の67.6%を占めており、裁判例の大勢は「認める傾向」にある」とされています。
保険会社の対応
このように、裁判例は評価損を認める傾向にあるにもかかわらず、保険会社の対応は、非常にしぶいといわざるを得ません。ここは保険会社の抵抗がかなり激しい分野のひとつです。
私は、これまで多数の交通事故の被害者の方から相談を受けましたが、評価損が認められないことで困っている方が大勢いらっしゃいました。
『評価損』(14ページ)によると、「自動車保険を取り扱う損害保険業界は、非常に制限的にしか評価損を認めようとしていない。示談段階では全面的に認めない会社もあり、認める場合も新車登録後1ヶ月以内の車両に対してだけとする会社もある」としています。
裁判を起こせば評価損が認められるような事案でも、交渉段階では、保険会社は、「払わない」と言うのが通常です。
保険会社も営利を目的としているのですから、お金を支払いたくない、というのは分かりはするのですが、あまりにやりすぎではないか、と思うことが多々あります(もっとも、だからこそ、弁護士が介入する意義・増額可能性があるのですが)。
評価損を支払ってもらう方法
支払ってもらう方法は、次回から詳しく解説していきますが、基本は
(1)理論
と
(2)立証
です。
評価損を支払うべき理由を理屈づけて説明し、それを証拠によって証明していくのです。
これは、訴訟においても同じことです。
さて、それでは次回は評価損が発生する理論について解説していきます。
【他の評価損の記事一覧】
・評価損なんて発生しません、と保険会社から言われた時の反論(評価損の理論)
・評価損が認められる条件(要件)の考察
・評価損はいくら支払ってもらえるか
・評価損の立証方法
・評価損を認めた判例の紹介(修理費の30%以上の評価損を認めた判例)
・評価損を認めた判例の紹介(初度登録から3年以上経過した自動車)
・評価損を認めた判例の紹介(国産車の評価損)
コメントはこちら