自己破産をすると、財産はすべて持っていかれるのが原則である、ということ以前解説しました。
「そんなの当たり前だ」、「覚悟はできている」という人でも見逃しがちな財産があります。
そして、破産手続をすすめていくと、「え!? そんなものまでとられるの!?」と驚かれることもあります。そこで、今回から、破産をする際に見逃しがちな財産について解説していきます。
家は財産ですよ
日本人の意識というべきものなんでしょうか。自分が住んでいる家や土地(とくに先祖代々住んでいるような土地)が財産だという意識が希薄な方が多いです。
そのため、「破産をすると、家もなくなってしまうの!?」と驚かれる方が時折おられます。
不動産は当然財産です(もちろん、親や兄弟のものは自分の財産ではありません。原則として、自分の名義のものだけです)。
破産をするととられてしまいます。
そこで、不動産をお持ちの方は、民事再生(原則として財産は処分されない)や任意整理、あるいはおまとめローンでの整理といった方法をとられる方が多いです(ただし、おまとめローンをする場合には利息に要注意です。不動産を担保にできれば、利息がかなり低くすむことが多いです)。
親御さん名義の不動産……それ、あなたの財産では?
中でも、とくに見逃しがちなのが相続財産です。
破産をする人の中には
「今、住んでいる家は親の名義だから、俺の財産じゃないよ。破産をする際に支障はないでしょ」
と考えられる方が多いです。
こういった場合に、こちらから、
「失礼ですが、その名義人になっている親御さんはご存命ですか?」
と質問しても、
「イエス。失礼だな、まだ生きてるよ」
ということであれば何の問題もないです。
しかしながら、
「ノー。すでに亡くなっているよ」
というご回答であれば大問題となる可能性があります。
不動産は、持ち主が亡くなると相続される
なぜなら、人が死亡すると、その人が持っていた財産(借金含む)は相続されるからです。
「いやいや、名義は親のものなんだからまだ相続してないよ」
と思われる方もいるでしょうが、残念ながらそうはいきません。
名義を変更するというのは、単に、いったん相続した財産を、誰の持ち物にするかということを決めているにすぎません。名義を変更するまでは死んだ人の財産のまま、ということはありません。死亡と同時に、分割相続されているのです。
たとえば、死亡された当時の家族構成が、妻1人、子2人という状況であれば、不動産も妻1/2、子どもがそれぞれ1/4ずつ相続することになります。くわしい相続の割合については、以下をご覧ください。
・相続人確定の基本
・養子は相続人になれるのか~相続人の確定~
・相続人が既に死亡していた場合(代襲相続)~相続人の確定~
・胎児がいた場合~相続人の確定~
・相続権の剥奪(相続欠格事由と廃除)~相続人の確定~
相続不動産がある状態で破産をするとどうなるか?
それでは、このように、相続不動産がある状態で破産をするとどうなるのでしょうか。
答えは、破産管財人がお金にかえて、各債権者に配当する、ということになります(法的には、破産管財人と他の相続人とで遺産分割協議を行う、ということになります)。
具体的には、
・他の相続人に対して、破産者の持ち分を買い取ってくれないか打診する(たとえば、破産者の持ち分が1/4、土地・建物を合わせた、全体の価値が400万円であればその1/4の価格である100万円で買い取ってくれないかと打診する)
・破産者の手元に残された財産(自由財産)や、破産者が破産手続開始決定後に取得する財産(新得財産)で持ち分を買い取る。
・その家を売って、持ち分に応じて売却益を分配する(たとえば、母1/2・子1/4ずつで、子どもの一人が破産をするケースでは、売却益の1/2を母に、1/4を破産しない子どもに、残り1/4を破産管財人が持っていくことになります)。
といった方法をとることが考えられます。
破産をする直前に名義移転→危険!
このような解説をすると、
「じゃあ、破産をする直前に遺産分割協議をして、他の親族に名義を移しちゃえばいいじゃん」
と思われるかもしれません。
しかし、これは非常に危険な行為です。
破産管財人は、このような遺産分割協議を取り消すことできると考えられます(これを否認権の行使といいます。最判平成11年6月11日・民集53巻5号898頁参照)。
そのため、このようなことをしても無意味どころか、場合によっては、詐欺破産罪として捕まったり、裁判所が「そんな悪いことをした人の借金は免除しません!」という決定をだすおそれさえあります。
バレなきゃいいと思われるかもしれませんが、登記を見れば(誰でも見れます)、いつ移転したかなんて一発でわかっちゃいます。
このような場合には、まずは相続放棄を検討すべきでしょう。
だいぶ長くなってきましたので、破産と相続放棄の関係については、次回解説します。
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